世事抄録 「51番目の州」を考える

 2016年、安全保障関連法の施行を目前にしたころ、ある自民党議員が「日本は米国の51番目の州になってはどうか」と発言し、物議を醸したことがある。

 この騒動は、一般的には荒唐無稽なこととして捉えられ、意外に短期間で鎮静化したが、私はこの「51番目の州」というフレーズに強い印象を受けた。そしてその後の安倍晋三首相の「100%共にあり」発言と「トランプべったり外交」への展開を、この言葉を下敷きにしながら見ていた。そして今回のトランプ大統領の訪日で、「51番目の州」が決して荒唐無稽なことではないことを認識した。

 安倍首相の「おもてなし」が、それを「幇間(ほうかん)」「茶坊主」「朝貢」などと揶揄(やゆ)する声などがあろうとも、何も逡巡(しゅんじゅん)することなく堂々と行われる様子を見ていると、巨額な兵器購入を持ち出すまでもなく、この「51番目の州」は実態として既に実現しており、そして当初は「戯れ言スピーカー」と見られた発言者は、まさに“慧眼(けいがん)の士”であるとさえ思うのである。

 戦後経済の自立復興専念のために、軍事を米国に依存した時からこの流れは一直線だという指摘もある中、おもてなし行事の締めくくりで、トランプ大統領が自衛隊横須賀基地の護衛艦に乗艦して自衛官を激励した。この図をどう見るのか。日本人の矜持(きょうじ)と独立心が問われている。

 (松江市・幸兵衛)

2019年6月20日 無断転載禁止