世事抄録 「令和」はじまる

 平成終焉(しゅうえん)の夜は時代に感謝し、早めに就寝した。令和元年初日は気分の良い目覚めであったが、特別の感情は湧かず。ただ、人生の原点で、半分以上を過ごした昭和が一段とかなたに去ったことに一抹の寂しさを感じた。

 昭和生まれにとっては和の字が入った新元号はどこかほっとする、という歌を本紙に投稿したが、人それぞれいろいろな捉え方があろう。新元号を祝う催事、セール、改元に便乗した詐欺など喧騒(けんそう)の日々も、ようやく静かになった。令和元年は自分にとっては後期高齢者元年でもある。ここのところ、高齢者による交通事故が相次ぎ、ニュースやワイドショーを騒がせている。ひとごとではない。高齢の父が中年の息子を殺すという痛ましい事件もあった。

 教育に携わったものとして心和むニュースもあった。火災で逃げ遅れた少女、踏切内で自殺を図ろうとした少女、立ち往生した老夫婦を救出したのはいずれも果敢な高校生たちであった。平成の終わりに財布をなくした高校生と、彼に即大金を貸した医師は令和になって再会した。

 政治学者の片山杜秀氏は「元号は常に現実に裏切られる」と述べている。「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」と首相が説明した新元号に込められた理想を、いかにかなえるか。社会的貢献はできないが、できるだけ人に迷惑を掛けない生き方をしたい。わが終焉の時代のささやかな目標である。

(浜田市清造)

2019年7月4日 無断転載禁止