世事抄録 「合成の誤謬」と参院選

 参院選の論戦や報道を眺めていて、一昔前に聞きかじった「合成の誤謬(ごびゅう)」という経済用語を思い出す。個人としては合理的な行動であっても、皆が同じ行動をとると不都合な結果が生じることだ。例えば節約と貯蓄は美徳だが消費は当然減退するわけで、特に不況時には有効需要を奪って深刻な事態を招く。最大争点である消費税の10%への引き上げをめぐり、この誤謬が経済・財政に関するデマ、誤解と混然一体となっている。

 だから、ある派遣会社の最近のアンケート結果に衝撃を受けた。家計の不安におびえつつ、働く主婦層の20・8%が消費増税に「賛成」。「反対」は46・9%だが、前回調査の2012年と比べ賛成は6・5ポイント増、反対はなんと23・5ポイントの大幅減だった。賛成理由の代表格は「これ以上、国の借金を増やすわけにはいかない」「増える社会保障費などを次世代に先送りしないように」。国民洗脳の恐ろしさに身震いがする。

 しかし国と地方合わせて1100兆円の負債があろうと、20年以上続く異常なデフレ下で国民に緊縮を強いるのは誤謬の極み。“借金”と言うが貸し手は国民なのだ。だいいち「日米など先進国の自国通貨建て国債の債務不履行は考えられない」と公言してきたのは財務省自身ではないか。明らかに経済オンチの大手新聞編集委員が選挙企画で「未来への責任」を不用意に迫る今、地獄の釜のふたが開く…。

 (松江市・風来)

2019年7月18日 無断転載禁止