あおり運転厳罰化/対策尽くし危険排除を

 高速道路などで乗用車やバイクに幅寄せしたり、前に回り込んで急停止したりと、一歩間違えば重大な事故につながりかねない「あおり運転」を巡り、政府や自民党が厳罰化に向け法整備の検討を進めている。早ければ、秋の臨時国会での法改正を目指す。交通違反を取り締まる現行の道交法に、あおり運転そのものを処罰する規定はない。

 神奈川県の東名高速で2017年6月、あおり運転に遭って無理やり停車させられたワゴン車が後続の大型トラックに追突され、一家4人が死傷した事故をきっかけに社会問題化。警察庁は18年1月、危険運転致死傷罪や暴行罪など、あらゆる法令を駆使して取り締まりを強化するよう全国の警察に通達を出した。

 しかし、あおり運転は後を絶たない。前方との車間距離を詰める道交法の車間距離保持義務違反は摘発例が多いが、罰則は高速道路の場合でも3月以下の懲役または5万円以下の罰金。常軌を逸した危険な行為であるにもかかわらず、軽すぎると厳罰化を求める声は根強い。専門家も、あおり運転を正面から処罰する規定の必要性を説く。

 ドライバーの2人に1人は後方からあおられた経験があるとの調査結果もある。法整備を急ぐのはもちろん、事故の状況などを記録するドライブレコーダー普及も含め対策を尽くし、車社会の危険排除につなげたい。

 茨城県内の常磐自動車道で起きたあおり運転殴打事件では、傷害容疑で逮捕された男が高級スポーツタイプの多目的車で前を走っていた車を追い越し、数キロにわたり急な車線変更や減速を繰り返すなどして停車させ、運転席の窓越しに男性を殴るまでの一部始終が被害者側のドライブレコーダーに記録されていた。

 男は「前の車が遅く妨害されたと感じた」との趣旨の供述をしているという。一方的に怒りを募らせた末の重大な事故につながりかねない危険なものだったとして、警察は暴行容疑に当たると認定。その上で、無理やり車を止めさせたことから、より量刑が重い強要容疑で再逮捕した。

 夫婦が亡くなり、娘2人もけがをした東名事故の裁判員裁判で横浜地裁は昨年12月、危険運転致死傷罪などに問われた被告の男に懲役18年の判決を言い渡した。停車させた行為は危険運転に当たらないとしながらも「死傷の結果は妨害運転によって現実化した」として、あおり運転と夫婦死亡に因果関係があると判断。危険運転致死傷罪が成立すると結論付けた。

 堺市で昨年7月、バイクの大学生に執拗(しつよう)なあおり運転を繰り返して追突し死亡させたとして殺人罪に問われた男の裁判員裁判の判決で、大阪地裁堺支部は今年1月に「死んでもかまわないという気持ちで、あえて追突した」と殺人罪の成立を認め、懲役16年とした。

 いずれも被告・弁護側は控訴しており高裁や最高裁で判断が分かれる可能性もある。あおり運転を抑止し、被害者や遺族の納得を得るためにも定義や処罰規定をきちんと法律に書き込むことは必要だ。

 それでも、あおり運転の根絶は容易ではないだろう。あおり行為の動かぬ証拠となるドライブレコーダーの普及を行政による費用の補助で後押しするなど、”包囲網”を着実に狭めていきたい。

2019年9月10日 無断転載禁止