丸山知事の公約問題/「県民に丁寧な説明を」

 島根県の丸山達也知事が重要施策として今春の知事選で掲げた、小学6年まで医療費を無料化する公約の実現が見送られることになった。知事就任後、県財政事情を検討した結果、実現は困難と判断した。丸山知事は「申し訳ない」とした上で、限られた財源の中で子ども医療費にこだわらず人口減対策を充実させていくことを優先させたいという。

 しかしこの釈明に釈然としない県民も多いのではないか。丸山氏は知事就任前に総務省から島根県に出向した経験もあり、県の財政事情には通じていたはずである。小学6年までの無料化を実現するには新たに5億7千万円が必要になる。

 丸山知事は見送りの理由に、就任後に臨時職員らにもボーナスや退職金を支給するなど新たな支出要因が発生したことを挙げているが、財政の見通しが甘かったのではないか。知事には県民が納得できるよう丁寧な説明を求めたい。

 子どもの医療費について島根県は現在、市町村と財源を折半し、未就学児まで1医療機関当たりの自己負担の上限を通院月1千円、入院月2千円、薬代無料とする負担軽減策を実施。県の軽減策に加え、県内19市町村のうち17市町村が独自財源を上乗せして対象年齢を拡大。13市町村は小学6年まで、12市町村は中学3年まで無料とし、いずれも所得制限は設けてない。

 吉賀町と知夫村が高校生まで医療費を無料としているのに対し、出雲、江津両市は未就学児にとどめており、丸山氏は選挙公約で最低小学6年まで無料化するとしていた。

 県内の子ども1人当たりの2018年度の医療費自己負担分は、中学3年まで無料としている市町村に比べ、江津市と出雲市は、小1から中3までを合わせて20万円以上多くなっている(出雲市は10月から所得制限付きで中3まで助成開始予定)。

 同じ島根県でも住む市町村によって子どもの医療費に格差が生じ、不公平感を募らせる住民もいる。その格差は是正されるべきだろう。

 丸山知事は県から交付金を市町村に支給して子ども医療費助成を現在の未就学児から小学6年まで拡充し、21年度から実施する方針を固めた。

 既に大半の市町村が無料化を含め、小学生以上の医療費を助成しているため、直接的に恩恵を受けるのは、出雲市と江津市の小学生約1万人。他の市町村は、交付金を他の子育て支援に振り向けるよう県は求めている。

 無料化の公約には届かないが、未就学児までから小学校を終えるまで医療費助成が拡充されることは、市町村間の医療費負担の格差縮小につながり、前進と言えるだろう。しかし中学生以降の格差は依然として残る。

 厚生労働省によると、全国1741市区町村のうち6割近くが中学卒業まで通院費を助成、高卒までは3割(昨年4月現在)。無料化を中心に子ども医療費を助成する自治体は急増し、子育て世代を奪い合う構図となっている。

 丸山知事が無料化を公約に掲げたのもこうした背景があるとみられるが、子ども医療費助成を巡る自治体同士の競争は零細自治体の財政を圧迫している。地方任せにせず、国の責任で医療費助成を充実させていくべきではないか。

2019年9月17日 無断転載禁止