W杯ラグビー/多様性の結束を見たい

 全国の12会場で約1カ月半にわたって展開されるラグビーのワールドカップ(W杯)が20日開幕する。

 ラグビーは熱心なファンが多いといわれてきたが、その数はプロ野球やサッカーと比べると少ない。競技の国際的な統括組織「ワールドラグビー」は当初、チケット販売が伸びないのではと心配した。

 しかし市民の関心は高く、大会組織委員会は販売枚数の増枠を決め、182万枚を完売することに自信を示す。収入増が見込まれる状況となり、大会予算も膨らんだ。ラグビー人気の高い国を中心に海外からは40万人を超える観戦客が訪れると予想される。

 スポーツファンが楽しみにしているのは、日本チームの活躍だけではない。世界最高の技術、力強さ、洗練された戦術を目の当たりにすることだろう。

 日本と韓国が共同開催した2002年のW杯サッカーとは、またひと味違った国際大会になるのではないか。日本のスポーツに新しい彩りを添えるかもしれない。

 4年前のイングランド大会で強豪の南アフリカを破るなど3勝を挙げた日本は今回、より一層国際色豊かなチームとなった。外国出身選手は前回、全体の約3分の1だった。今回はさらに増え、ほぼ半数の15人となった。

 ニュージーランド、トンガ、南アフリカ、サモア、韓国、オーストラリア出身の、日本国籍を持つ選手も持たない選手も赤と白の横じまのユニホームに身を包んで戦う。

 ニュージーランド出身の指揮官、ジョセフ・ヘッドコーチはチームの結束が勝利を生むと確信している。多様な背景を持つ31人の選手が心を一つにして戦うことを目指し、チームのスローガンに「ワンチーム」を掲げる。

 ニュージーランドで生まれ、フィジー出身の母親を持つリーチ選手は15歳で札幌にやって来て、日本のラグビー文化の中で育った。2大会連続で主将を務める。

 強いリーダーシップを発揮し、チームのミーティングでは英語と日本語を使い分けながら、ときに日本のラグビー史の一こまについて講義を授けるように説明することもあるという。選手の意識と意欲を刺激しながら、チームとして日本ならではの一体感を強めようと考えている。

 多様性と結束は決して矛盾するものではない。多様な背景を持つ選手の集団であるからこそ発揮できる特長があるはずだ。強い結束がチームに良い意味での化学変化を起こしている部分もあるだろう。

 日本は今、多くの外国出身者がさまざまな職場で働くようになった。日本の習慣に戸惑い、職場の日本人の同僚と親しい関係を築けない人も多いようだ。日本チームが習慣や言葉の壁を打ち破るモデルとなれば、ラグビーと今大会の社会的な価値はさらに上がるに違いない。

 ところで、大会が日本のスポーツ文化をより豊かなものにする可能性はどこにあるのだろう。レガシー(遺産)の一つとして期待したいのは、芝の広場で子どもに限らず多くの市民が元気に走る光景が全国に広がるきっかけになることだ。

 サッカーと手を携え、全国で土のグラウンドや空き地の芝生化を進めることができれば、ラグビーの根もきっと広がるはずだ。

2019年9月20日 無断転載禁止