日銀の金融政策/政策手詰まり否めず

 日銀は、景気は緩やかな拡大基調をたどっているとして現行の金融政策を維持した。当面、長短金利をそれぞれ0%、マイナス0.1%に誘導する政策を継続する。

 米中貿易摩擦による海外経済の減速、消費税増税などで景気が落ち込むリスクに備え、政策発動の余地を温存する狙いがあるとみられる。10月末の次回の金融政策決定会合で「経済・物価動向を改めて点検する」と、追加措置を講じる可能性を示唆したが、手詰まり感は否めない。

 手持ちのカードは限られているが、物価上昇の勢いが損なわれる恐れがある場合は、ちゅうちょなく追加緩和を行うという。物価上昇に向けた強い姿勢を示し続けようという日銀の立場は理解できるが、それに伴う副作用により、金融システムの健全化が脅かされたり、実体経済が弱体化したりするようでは元も子もない。

 市場関係者の間では、短期金利のマイナス幅を拡大する「マイナス金利の深掘り」や、事実上マイナス0.2%まで許容している長期金利の変動幅をさらに拡大することなどが、追加緩和の具体策として取り沙汰されている。

 現在でも、利ざやの縮小が地方銀行の経営を圧迫し、超低金利が年金基金などによる資金運用を困難にしている。こうした状況を改善するどころか、さらに悪化する恐れを放置してでも、もう一段の金融緩和を進めるというのなら、2%の物価目標の必要性と、その実現に向けた追加緩和策の実効性を丁寧に説明しなくてはならない。

 今回の会合は、欧州中央銀行(ECB)が12日に3年半ぶりの利下げを実施し、7月に10年半ぶりの利下げに踏み切った米連邦準備制度理事会(FRB)も18日に2回連続の利下げを決めた後のタイミングでの開催だった。

 世界の主要中央銀行が金融緩和に動くことにより内外の金利差が縮小、為替相場で円高圧力が強まる中、日銀の対応が注目された。日銀は現行の政策を維持したため、やや円高が進んだものの、市場が大荒れになることはなかったが、今後も相場が円高に振れやすい地合いは続くだろう。

 金融政策の第一の目的は物価安定で、為替相場は直接の目的ではないが、金融政策が結果として相場に影響しているのは事実だ。日銀には、政府と連携した細心の政策運営を求めたい。

 ECB、FRBともにいったんは金融緩和路線から脱し、金融政策の正常化に向かっていたが、米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題などによる景気減速への対応を迫られ、再び金融緩和を強いられた形だ。

 米中貿易摩擦は曲折をたどりながら混迷を深め、英国のEU離脱問題も、ジョンソン首相が「合意なき離脱」に突き進む恐れが高まっており、世界経済の混乱は収まりそうにない。サウジアラビアの原油精製施設への攻撃を巡るきな臭い動きも、世界経済の下押し圧力になるだろう。

 今後、各国の中央銀行にさらなる利下げを求める政治的圧力が増大する事態は避けられそうにない。米欧の中央銀行が主導する形で世界の金融緩和競争が激化し為替相場で円高が一段と進行すれば、日銀に対する圧力も高まるだろう。日銀の金融政策運営は胸突き八丁に差し掛かった。

2019年9月22日 無断転載禁止