全世代型社会保障検討会議/国民の理解欠かせない

 政府が全世代型社会保障検討会議を発足させた。少子高齢化が深刻な日本では、持続可能な社会保障を将来に引き継ぐための改革は不可避だろう。ただ消費税増税分を主な財源に取り組む改革の目的は「財政再建」の一方、財政支出を伴う「現役世代の支援」も含む。

 これは複雑な連立方程式の解を同時に求めていくのに近い。困難で痛みを伴う改革の実を上げるには、今後の増税の可能性も含め国民の目に見える議論で理解を得ていくプロセスが欠かせない。

 今回の改革は、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり始め社会保障の公費支出急増が予想される「2022年問題」に備えるためだ。年金については受給開始年齢の70歳超への選択肢拡大や、パートやアルバイトで働く人の厚生年金加入拡大へ向けた要件緩和などが検討課題になる。

 医療では、後期高齢者の受診時の窓口負担を現在の原則1割から2割に引き上げることが取り上げられる見込みだ。介護についても、サービス利用者の負担を今の原則1割から2割に上げる是非が論点になりそうだ。

 これらは、支え手を増やしたり高齢者にも負担増を求めたりして社会保障財政の健全化を図る狙いだ。ただ厚生年金の保険料は労使折半で、加入拡大は中小企業の経営を圧迫しかねない。高齢者に負担増を求めるのも反発を呼ぶのは間違いない。いずれも国民に十分な説明が必要だろう。

 改革のもう一つの柱が若者や子育て世帯など現役世代への支援だ。消費税増税に合わせて10月から始まる幼児教育・保育無償化、20年度からの低所得世帯の高等教育無償化など既に決まっている政策に加え、就職氷河期世代の支援や副業しやすい職場環境整備などが議題になりそうだ。

 高齢者に偏らず現役世代にも給付が向かう全世代型社会保障の考え方は、12年に旧民主党政権と野党だった自民、公明両党が合意した「社会保障と税の一体改革」で打ち出された。社会保障改革のための消費税増税に理解を得るには、現役世代にも恩恵が届く必要があるとの判断からだ。

 その後、安倍晋三首相は15年10月から予定していた消費税8%から10%への増税を2度延期。17年秋の衆院選前、今年10月の増税実施を前提に、それまでは2%の増税分5.7兆円の5分の4を財政再建に回すはずだったのを半分に抑え、残り半分を現役世代への支援と社会保障の充実に充てるよう使途変更した。

 この影響で政府が20年度を目指していた基礎的財政収支黒字化は25年度へ延期された。国の予算は3分の1を国債発行での借金に頼っているのが現状だ。将来世代のための社会保障改革が将来世代へのつけ回しをさらに増やしかねない懸念にも留意が必要だろう。

 社会保障の主な財源は保険料と税だ。今回のような大きな改革では、財源確保の議論は不可欠であり、保険料収入で足りなければ新たな増税案が浮上してくる可能性は否定できないのが現実だ。

 麻生太郎財務相は消費税10%からのさらなる増税は現段階で議題にしないと述べる一方、「社会保障財源を今ですら十分確保できていない」と言葉を濁している。難しい問題に挑むからこそ国民を巻き込んだ議論が望まれる。

2019年9月23日 無断転載禁止