レッツ連歌(要木木純)・9月26日付

◎針の山初登頂に成功し

 キラキラ光るひとすじの糸      (出雲)野村たまえ

◎月月火水木金金土日なし

 時短に舵を切ったコンビニ      (益田)石川アキオ

◎二十年着られずじまいのワンピース

 今ひとたびのはやり待たなむ     (江津)岡本美津子

 縮んだからと皆にいいわけ      (雲南)福場 仁一

◎笑ってたヤツが今朝から席がない

 別の部屋から声が聞こえる      (雲南)横山 一稔

◎山奥で熊に出くわし死んだふり

 学芸会の主役仕留める         (出雲)栗田 枝

◎アメリカのお化け屋敷にお岩さん

 ハリウッドからお誘いがきて     (出雲)飯塚猫の子

◎街角ですれ違っても会釈なく

 隣の枝がうちに張りだし       (松江)持田 高行

 スマホがあれば何もいらない     (大田)福田 菜摘

◎尺玉のとどろく音に握った手

 たまには当たる今日の運勢    (出雲)はなやのおきな

 夫もいますし子供もいますし     (出雲)櫛井 伸幸

◎おいそれと入れてもらえぬ午前様

 あらゆる呪文唱えてはみた      (美郷)芦矢 敦子

◎三十年経って今頃いわれても

 聖徳太子が壺から出てきた      (出雲)平井 悦子

 やり直したいやり直せない      (米子)板垣スエ子

 旦那生きてる子も孫もいる      (出雲)吾郷 寿海

◎避難指示でてるぞ俺について来い

 スマホ片手に慣れた指先        (江津)江藤 清

◎お母さんこれから見合いに行ってくる

 父さんに似た人はダメだよ      (安来)根来 正幸

◎やめなさいといわれて余計むきになる

 枯れたトマトにまだ水をやる     (江津)花田 美昭

 見て見ぬふりのアンタさすがだ    (雲南)妹尾 福子

◎ここかしこ年取るにつれ白くなり

 気づかれまいぞ腹の黒さは      (益田)可部 章二

 枯山水の庭に淡雪          (江津)井原 芳政

 夫婦の会話までもはずまず      (雲南)福場 仁一

◎補聴器を外したことをもう忘れ

 悪口だけはよーく聞こえる      (雲南)安部 小春

◎契約書だけはきちんと作りなさい

 グリーンランドは売り物じゃない   (松江)田中 堂太

◎殿様と知らずに乗った渡し船 

 包まれていた小判一枚        (益田)石田 三章

◎おしゃべりと食べ放題に行く女房

 今日も用あり明日も用あり      (松江)熊野 年恵

 いっしょにいかがと言ってはくれない (益田)吉川 洋子

 やけにくしゃみが出るお留守番    (大田)内田 節子

◎わかるかいモテる男はつらいのよ

 使い分けするスマホ三台       (松江)岩田 正之

◎なんとなくフッと浮かんだ語呂合わせ

 レッツ連歌の締め切りの後      (出雲)石飛 富夫

(挿絵・麦倉うさぎ)
 今回は、あっさりとした、素直な付け方の句を選んでいるなあと、今気付きました。連歌の専門用語に「遣(やり)句(く)」というのがあって、発想の飛躍が難しく、前回お話しした「打越」にどうしてもなってしまうときに、前句に対する感想などを軽く付けて、次の句を付けやすくすることがあります。一種の逃げですが、これはこれで、味わいがあるものだと思います。いつもは、発想が飛躍して、理屈も破綻し、何を言っているのか分からないが、エネルギーに満ちた、変な句が好みなんですが、このところ選者は心身ともに元気がないかな。淡泊な句を選んだようです。入選が、選者の気分に左右されるのはよくないかもしれないですが、連歌は「座」の文学ゆえ、場の雰囲気にどうしても影響を受けます。ご容赦ください。次回は、いつもの通り、変な句を選ぶ気分になるかも。

 次は今月の入選句を選んで、前句にして、長句五七五を付けてください。

 来月10月第5週は、黒田光さん担当のレッツ連歌スペシャルがあります。今回の前句は、

 昨日は二割今日は三割

 何が二割なんだろう? いろいろ考えられそうですね。こちらの方も長句五七五を付けてください。

 (島根大教授)

2019年9月26日 無断転載禁止

こども新聞