公立・公的病院再編/地域住民の安心確保を

 厚生労働省は、全国の公立・公的病院のうち再編・統合検討が必要とする計424病院の具体名を公表した。島根、鳥取両県からも、それぞれ4病院が指摘を受けた。

 高齢化に伴い増加の一途をたどる医療費を抑えるには医療提供体制見直しも避けては通れまい。しかし医療の質を下げず地域住民の安心を確保できるよう、地域ごとの個別事情には十分配慮すべきだ。

 厚労省によると、病院の再編・統合には、統合で廃止に至るケースも想定するが、病床(ベッド)削減や機能転換、他の病院への診療科移転なども含む。これらを進めようとするのは団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となり、65歳以上の高齢者が総人口の3割を占めるようになる2025年に備えるためだ。

 そこに向け厚労省が構築を目指す「地域包括ケアシステム」は、高齢者が病気を抱えたり重い要介護状態となったりしてもなるべく自宅など住み慣れた地域で暮らし続けられるよう支援する制度だ。超高齢社会に耐えられるよう医療、介護に地域全体で対応する体制をつくる狙いがある。

 病院のベッドに関しては、人口減少と少子高齢化に合わせた機能転換が必要だとされてきた。比較的若い世代に多い急病、大けがの手術の際に必要な「高度急性期」「急性期」向けベッドの必要性は低くなる一方、脳血管障害などのリハビリに対応する「回復期」のベッドの需要が高まるとみられるからだ。

 急性期ベッドは看護師配置が手厚く診療報酬が高く支払われる。だが現状では、回復期ベッドが足りず、リハビリ中の高齢者が入院している例も多いとされ、ミスマッチ是正が課題になってきた。

 この方向に沿って医療提供体制を見直すため、国が法律に基づいて各都道府県に策定を求めたのが「地域医療構想」だ。全国の病院のベッド数は18年で約125万床だが、同構想では25年に必要なのは約119万床で、削減が可能と思われた。ところが厚労省が全国の病院に予定するベッド数の報告を求めたところ消極姿勢が目立ち、中でも公立・公的病院はほぼ削減が進まない見通しであることが分かった。

 このため今回、病院側や都道府県に対し再検討を促すため、診療実績が特に少なかったり、近くに類似の病院があったりする病院名の公表に踏み切った。

 ただ懸念される問題点は多い。第一に、山間へき地、離島への立地や、がんの先進治療など民間病院では限界がある医療を提供するという公立・公的病院ならではの役割は、経済合理性重視で評価を下せるものではない。患者の立場になれば、長年頼みの綱にしてきた地域の病院が遠隔地に統合されるなどすれば不安、不利益は計り知れない。

 さらには、公立・公的病院の再編・統合により、現状でも深刻な地方の医師不足に拍車が掛かりかねない。それが引き金で人口減少、過疎化がさらに進む可能性もある。

 地域医療構想は都道府県が複数の自治体単位で策定し、それを受けて各病院側が具体的なベッド数削減を決めていく。その過程では、地元の医療関係者のほか住民代表らも加わった会議で協議することになっている。地域医療の将来像は住民本位で探っていくべきだろう。

2019年9月29日 無断転載禁止