ピンチをチャンスに

 ピンチをチャンスに変えるという発想は、ビジネスなどの世界でよく登場する。不況の時こそライバル会社を出し抜く好機であり、経営危機に追い込まれたことによって会社の膿を出し切り、効率的な経営体質に変革するなど逆境をバネにしたサクセスストーリーが経営者らから語られる▼昨年7月、島根県も巻き込んで大きな被害をもたらした西日本豪雨。大田市で開かれた少年の主張島根県大会で、最優秀の県知事賞に選ばれた桜江中学校3年、矢萩勝希さんの弁論タイトルは「泥の中から見つけたもの」▼豪雨で近くを流れる江の川があふれ、江津市桜江町にある矢萩さんの家も床上1.2メートルまで浸水。畳が山のように立ち上がり、冷蔵庫も倒れるなど変わり果てた家の中に家族全員が立ちすくんだ▼泥出しから始まった家屋の復旧を支えてくれたのは、しばらくして見せた妹たちの笑顔。水害などなかったかのような明るさに背中を押され「自分たちでやるしかない」と業者の力を借りずに自分と父親、祖父の男3人で家を修理▼床板を載せたり、化粧板を張ったりなど素人作業を重ねるうち自宅が元の姿を取り戻していく。その達成感に「自分の家だけでなく将来は大工になって人の家も建ててみたい」。水害というピンチが家族の連携と将来の目標発見のチャンスを与えてくれた。泥の中から見つけた再生の力。こちらも励まされる。(前)

2019年9月30日 無断転載禁止