消費税増税/子や孫に思いをはせて

 10月1日から消費税の税率が8%から10%に上がる。これによる増収5兆7千億円は、財政再建と社会保障制度の安定化に費やされる。単純計算で年間の消費税収は20兆円を超え、最大の税目となる。3%の税率で1989年に導入されて30年、消費税は日本の財政を支える柱に育ったと言えるだろう。

 しかし所得税、法人税などと合計しても、税収では100兆円を超える歳出の約6割しか賄うことができず毎年、多額の国債を発行して帳尻を合わせているのが日本の財政運営の現状だ。

 無駄な歳出を削ることは当然だが、高齢化の進展に伴う社会保障費の増大などを考えれば、それにも限界があろう。内部留保をため込んだ企業への対応、富裕層や金融資産への課税強化なども検討課題になるが、景気に左右されにくく国民が等しく負担する消費税が増収の柱になるのは間違いない。

 国の赤字体質を一挙に改めることは不可能だが、社会的弱者に十分配慮し、経済・社会情勢などから税率引き上げの規模やタイミングを慎重に検討した上で、歳入増を図っていかなければならない。

 食品などを除き、買い物をするたびに、その値段の1割を納めることになる。レシートに記載されている金額を見れば、ため息をつくこともあろう。しかし、子どもや孫らに思いをはせ、その痛みの意味を考えてほしい。私たちの世代が負担を回避すれば、そのつけは将来世代に回る。

 財政運営を巡っては、国債のほとんどを国内で消化できており、国民の金融資産が豊富なため、国債消化の余裕はまだあるとして楽観視する説もある。しかし今のペースで国債を発行し続ければ、いずれその余裕も枯渇しよう。問題はその速度がどの程度かという点だろう。

 最近では、自国通貨建てで借金をする限り財政赤字は問題にならないとする「現代貨幣理論」(MMT)も登場した。だが政府債務の膨張で通貨や国債の価値が急落すればインフレ圧力が高まり、高金利を招くことは主流派経済学が説くところだ。MMTが異端視されるのは当然だろう。

 今の低金利が反転すれば利払い費が急増する。長期金利が1%上がれば利払い費が9兆円増加するとの試算もある。その低金利は日銀が国債を大量に買い上げて水準を抑え付けている面が強い。その際に市場に潤沢に供給されたマネーは利回りを求めて資産市場に流入し、価格を押し上げ、バブルの前兆との見方も出ている。

 何らかのきっかけでひとたびマネーが暴走し始めれば、日銀がどれだけ対応できるだろうか。市場は危うい均衡にあると言っていい。いたずらに危機感をあおるつもりはないが、安穏としていられる状況ではないことは強調しておきたい。

 7%上げるのに費やした30年は、政治と国民が厳しい現実から目を背け続けた時代だったと言えるのではないか。今の財政状況は消費税が導入された89年とは比較にならないほど深刻だが、日常生活の中では切迫した危機感は感じにくいかもしれない。苦境を突破するには、政治のリーダーシップが欠かせないが、視野が自分の庭先までにしか及ばない政治家には、この任は務まらない。

2019年9月30日 無断転載禁止