中国建国70周年/平和と共生の道筋示せ

 1949年10月1日、毛沢東が北京で中華人民共和国の建国を宣言して70年。社会主義を信奉する貧しい国は今、米国に次ぐ世界第2の経済大国となった。今後さらに国力の強化を図り、今世紀半ばまでの社会主義近代化強国づくりを目指す。

 習近平国家主席は祝賀式典で、共産党政権の業績と正統性を誇示、中華民族の偉大な復興という「中国の夢」の実現を訴え、大規模な軍事パレードで最新兵器を公開して軍事力の増強ぶりを内外にアピールする。しかし共産党独裁で非民主的な中国の「世界支配」を懸念する声は国際社会に根強い。中国は覇権を追わず、平和と共生を目指す道筋を明確に示すべきだ。

 習政権の今年の最優先課題は内政と外交を安定させ、無事に建国70年を祝うことだった。だが、米中貿易摩擦は続き、香港では「逃亡犯条例」改正案への反対運動が反中国・民主化要求デモに発展し、収拾のめどは立っていない。

 米中貿易摩擦は昨年12月の首脳会談で歩み寄りの兆しが出ていたが、今年5月、中国側が、米国の圧力で知的財産権保護のための法改正を行うのは主権侵害と激しく反発。解決の糸口は見えていない。

 4~6月期の経済成長率は米国の制裁追加関税の影響もあって6.2%と92年以降で最低だった。政府は銀行の預金準備率を引き下げ、企業減税などで景気の下支えを図る。米中貿易摩擦や豚コレラの影響で豚肉の価格が高騰。庶民の不満を抑えるため備蓄豚肉を放出するなど政府は対策に躍起だ。

 香港デモの背景には中国が約束した「一国二制度」や「高度な自治」の空洞化への住民の反発がある。6月に始まったデモは長期化、民主派は1日の建国記念日にもデモを予定している。

 毛沢東が発動した極左的な政治運動、文化大革命(1966~76年)は中国社会に大きな混乱をもたらした。今、北京では「文革の再来か」というささやきが聞かれる。大学の教授会や国の研究機関では、習氏の思想や重要演説についての政治学習が義務付けられ、自由な討論ができる雰囲気が失われたからだ。

 習氏は2017年の第19回共産党大会で、党の指導や強国路線を盛り込んだ習近平思想を打ち出した。翌18年3月には習思想が憲法に入り、国家主席の3選禁止規定が撤廃され、習氏の終身支配に道が開かれた。個人崇拝の傾向も強まった。

 13年に発足した習政権は政治的引き締めを強め、民主化要求や少数民族の運動を厳しく取り締まり、インターネット検閲を進めた。だが、強権的な手法で国内の安定を長期に維持するのは難しい。いずれは中国も民主化せざるを得ないだろう。

 習氏は9月初め、党の指導や中国の社会主義制度への「全ての攻撃との断固とした闘争」を呼び掛ける異例の演説を行った。香港、台湾、外交にも言及し、さまざまな分野で、米国など「敵対勢力の陰謀」を疑う対決姿勢をうかがわせた。

 中国は「世界一流の軍隊づくり」を掲げ、軍事力強化を図る一方で、平和的発展を唱え「人類運命共同体の構築」を呼び掛ける。この異なる二つのシグナルをどう解釈すればよいのか。中国は国際社会に説明する必要がある。

2019年10月1日 無断転載禁止