かんぽ不正中間報告/組織風土の改革を

 かんぽ生命保険の不正販売に関する調査の中間報告で、不正が疑われる保険契約が6327件あることが分かった。問題が拡大した原因は、企業統治が適切に機能しない日本郵政グループの組織風土にある。グループ全体で改革に取り組まなければならない。

 中間報告によると、2014~18年度の5年間で、保険業法などの法令や社内規定に違反した疑いのある契約が6327件あり、2割強の約1400件に法令違反の可能性がある。ただ、問題がありそうな約18万3千件のうち調査が完了したのはまだ4割弱にとどまり、12月末に公表予定の最終報告で違反が大幅に増えるのは確実だ。

 かんぽ生命と保険を委託販売している日本郵便が15~18年度の4年間で、金融庁に報告していた法令違反は計73件にすぎなかった。実際は長年の間、桁違いに多い法令違反があったわけで、これまでの社内調査がずさん極まりなかったことを示している。真摯な反省を求めたい。

 保険料の二重払いなどの不利益解消を希望する顧客は、2万6036人に上った。日本郵政グループは保険料の返金など金銭補償に応じる方針だ。顧客の要望に最大限、誠実に応えるよう努めなければならない。

 同時に公表された弁護士3人による特別調査委員会の報告書は、両社の組織風土に問題があったと分析。「顧客本位の業務運営」が現場に十分浸透しておらず、過大な営業目標を達成するため「どう喝指導」と称する不適切な指導が行われていたことなどを挙げた。両社の持ち株会社である日本郵政が適切な統制をしていなかった点も指摘した。

 二つの調査が示しているのは、日本郵政グループの特異な企業体質だ。かんぽ生命と日本郵便には、内部告発や年間数千件の苦情が寄せられていたが、真剣に向き合わず、顧客よりも組織を優先する姿勢に終始した。そのため、自浄作用を働かせることができず、長期間にわたり不正を見過ごす結果を招いた。

 問題が発覚した6月下旬以降も、経営陣の判断は迷走した。かんぽ生命は当初、不正販売を「不適切な販売には当たらない」と強弁していた。保険販売の再開時期も、10月1日と決めたが、高市早苗総務相の批判を受けて来年1月へ先送りした。事態の認識が甘すぎ、危機感が薄すぎる。

 日本郵政の長門正貢社長の記者会見で象徴的な場面があった。長門氏は「取締役会に全く情報が上がってきていなかった」と、現場に責任を押し付けるような発言を繰り返した。不正販売を報じた番組を巡り、日本郵政グループがNHKに抗議した問題については、謝罪した上で、番組の内容は「今となっては全くその通り」と認めた。

 当事者意識の乏しさと的外れな経営判断に絶句する。情報が組織の上部に迅速に報告される体制をつくるのは経営者の役目だ。報道を受けて徹底的な内部調査を実施し、対応策を講じることこそ、まっとうな経営だろう。企業統治が機能不全に陥っていると言わざるを得ない。

 この企業体質を根本的に改めない限り、失われた信頼を回復することは不可能だ。経営責任を明確にすることも含め、日本郵政グループの経営陣の覚悟が問われている。

2019年10月2日 無断転載禁止