ふるさと納税問題/地方分権の後退だ

 ふるさと納税制度が司法の場に持ち込まれる。

 返礼品を制限した6月の法改正前の過剰な寄付集めを理由に、総務省は大阪府泉佐野市を制度参加の指定自治体から外した。第三者機関「国地方係争処理委員会」は、この決定根拠に違法の恐れを指摘して再考するよう勧告したが、同省は除外の継続を決定。これに対し千代松大耕市長は11日、大阪高裁に提訴すると正式に表明した。

 係争委は、国と地方の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に変えた地方分権改革の成果の一つとして2000年に置かれた。元高裁長官らをメンバーに自治体に対する国の行き過ぎた関与をいさめる役回りだが、その勧告が無に帰す前例をつくったことは深刻だ。地方自治の観点からも危惧せざるを得ない。

 それまで係争委は、計6回の審査の申し出を受けていた。最近4回は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設に対する同県の申し出だ。いずれも「審査になじまない」などと「門前払い」の却下や判断そのものを見送っており、組織の形骸化も指摘されていた。

 そんな経緯を挽回するように、泉佐野市の言い分に理解を示す地方寄りの勧告で設立趣旨に立ち返ったかに見えたが、総務省の強硬姿勢でさらに存在感が問われることになったと言える。

 確かに通販ギフト券を高還元率の返礼品として、全国でも突出して寄付を荒稼ぎした泉佐野市は目に余った。返礼品競争の過熱で国が自粛要請を通知する中での強行は耳目を集め、他の自治体に不公平感が募った。

 ただし、それは返礼品を「寄付額の3割以下の地場産品」に法定する前のことで違法ではない。勧告が、さかのぼって適用した新ルールでとがめるのに疑義を示したのはうなずける。総務省も重く受け止めざるを得ないとする向きも多かった。

 ところがふたを開ければ同省は勧告を受け入れず、過去の寄付募集のありようを判断材料とするのも許容の範囲だと主張したのだ。

 地方の不平不満を審議するための機関に対し、地方自治を所管する総務省が異を唱えたことで、その権威が大きく揺らいでいる。さらに、自治体運営への国の関与を最低限に抑える地方自治法の原則にそぐわず、政府の介入が横行しかねない危うさもはらんでいる。

 「正直者がばかを見る」。泉佐野市を批判する総務省と他の自治体の双方から聞こえた例えだ。法的拘束力のない通知に当たり前に付き従う自治体を「正直者」とするのは「上下・主従」そのもので、地方分権の後退である。だから今回の総務省の判断が、自粛を受け入れた自治体の手前、見せしめのペナルティーが強引に正当化されたように映るのだろう。

 ふるさと納税は、「故郷への恩返し」という「いい話」が、寄付者や一部の自治体の「もうけ話」に変質している。他方、被災地支援での活用や自治体のファンを増やして交流につなげている例もある。要は運用の問題だ。

 裁判が始まれば、その過程で制度のさまざまな不備が露呈するだろう。それでも維持すべしとするなら、抜本見直しの好機と捉え、健全運用につなげなければならない。

2019年10月12日 無断転載禁止