日産新体制/信頼回復が最優先

 日産自動車は、専務執行役員から社長に昇格する内田誠氏の下で再建を進める体制に移行する。業績悪化に歯止めをかけることも急務だが、前会長カルロス・ゴーン被告の特別背任事件や西川広人前社長の報酬問題などで失われた信頼を回復することが最優先課題だ。

 日産を取り巻く厳しい環境に立ち向かう十分な力を備えているかを判断するのは早計だが、時間的な制約やさまざまな条件がある中で、指名委員会が選考した新経営陣だ。

 内田氏は53歳と若く、商社勤めの経験もあり、国際経験も豊富だ。日産が再び、輝きを取り戻し、世界市場で尊敬される企業に生まれ変わる道を切り開くことに力を尽くしてほしい。

 通常の社長交代ではない。背水の陣で存亡を懸けたトップ人事だ。もう後はないことを、内田氏らは十分、自覚しなければならない。

 長年、ゴーン被告が君臨した「ゴーン時代」から完全に脱するために、外部から経営者を招請する案も検討されたが結局、自社幹部の内部昇格に落ち着いた。ショック療法による混乱を避けたようだ。

 トップの脇を固めるのは、最高執行責任者(COO)に就くアシュワニ・グプタ氏だ。連合を組む仏自動車大手ルノーに在籍していたことがあり、現在は、企業連合の一角である三菱自動車のCOOの地位にある。日産の経営にルノーの意向を反映させる役回りと見るのが妥当だろう。

 安定性とルノーとのバランスを重視した布陣と言える。それは一つの判断だろうが、その分、新鮮味や求心力を欠くきらいもある。

 「ゴーン時代」を否定することから立て直しを始めるのなら、今回のトップ人事が発する社内外へのメッセージはさほど力強いとは言えないのではないか。内田氏が自身の言葉で、社員、取引先、顧客らに決意を語っていかなければならない。

 日産の長期的な戦略は、ルノーとの資本関係の見直しが前提になる。ルノーが経営危機にあった日産を支援した経緯はあるものの、現在の両社の業績を比較すれば、ルノーが日産株の4割を保有する状況はいびつだ。

 日産はルノーに対し、株の保有比率を下げるよう交渉しなければならないが、この時、グプタCOOを含む経営陣は一丸となれるだろうか。ルノーの経営が向上することは連合を組む日産にとっても望ましいことだ。しかし、資本関係の見直しでは利益相反する局面も予想される。

 ルノーの背後には、雇用の維持・創出などを目的に、積極的に企業経営に介入するフランス政府が控えており、交渉は一筋縄ではいかないことは、これまでの経緯からも明らかだ。内田氏がいかにして日産経営陣をまとめ、ルノーと渡り合っていくか、真価が問われる場面はそう遠くない将来に訪れる。

 協議対象が資本構成の変更に限定されれば、交渉は行き詰まるだろう。これを打開するには、購買、生産、開発、人事などを巡って両社間で深めてきた協力関係を、自動車メーカーの主戦場になっている電気自動車(EV)や自動運転などの分野に拡大し、反転攻勢に打って出ることが欠かせない。新生日産への道のりは険しいが、一歩一歩登って行くしかない。

2019年10月13日 無断転載禁止