「幼保無償化」/効果の検証が必要だ

 消費税10%への引き上げに合わせ幼児教育・保育の無償化がスタートした。対象となる子育て世帯には歓迎すべき支援になるだろう。ただ本来の狙いである少子化対策としては、どこまで有効打になり得るのか。政府は効果をしっかり検証し、今後の政策展開に生かすべきだ。

 幼保無償化は安倍政権が推進する「全世代型社会保障」の一環だ。消費税増税分を財源に幼稚園や認可保育所、認定こども園の利用料を無料にする。3~5歳児は原則全世帯対象で、0~2歳児は住民税非課税の低所得世帯に限る。一部の私立幼稚園は月2万5700円、認可外保育所は3~5歳児で月3万7千円を上限に費用を補助する-などの内容だ。

 子どもを産み育てやすい環境をつくる少子化対策は重要だ。柱は2本ある。一つは若い世帯が経済的理由で子どもを諦めることがないよう子育て費用を支援すること。もう一つは、女性も働いて収入を得ながら子育てできるよう保育の受け皿を整備し待機児童を減らしていくことだ。いずれも国内産業や社会保障を支える現在および将来の働き手確保が目的だ。

 幼保無償化は経済的支援に当たるが、問題はこれが待機児童対策にはつながらず、逆効果の懸念さえある点だ。

 希望しても認可保育所などに入れない待機児童は4月1日時点で1万7千人近くに上る。3~5歳児は親の所得制限をせず全員無償化することは、子どもを預けて働きたいとの新たな需要を掘り起こす。保育の受け皿整備が追い付かない現状のままでは、2020年度までに待機児童をゼロにするという政府目標はさらに遠のきかねない。

 また従来も生活保護世帯の子どもは保育料無料であり、低所得世帯の負担軽減制度もあった。それだけに今回の「全員無償化」は所得の高い世帯に恩恵が大きく、貧困世帯の子育て支援の効果は疑問だとの声もある。

 最も困っているはずの待機児童のいる世帯には無償化の恩恵が届かず、不公平も生じる。全員無償化に充てる財源を、まずは待機児童対策に使うべきだとの意見が根強いのも当然だろう。

 国の制度設計の不備是正を自治体に負わせている実態もある。県庁所在地など待機児童を多く抱える103自治体を対象にした共同通信の調査では、認可外保育所など国の基準では無償化にならないケースに対し独自財源での支援を実施または検討している自治体が約6割に上っている。

 無償化される認可保育所に入れず、やむなく通う認可外保育所が上限付き補助にとどまるのは不公平だと子育て世帯の不満が大きいためだ。

 幼保無償化は17年秋の衆院選の直前、安倍晋三首相が自民党の公約として唐突に打ち出した。その際、消費税増税で得る財源の一部を国の借金返済から使途変更して充てるとも表明。しかし詳細な制度設計は選挙後の予算編成過程に回すなど生煮え感が否めなかった。

 衆院選を有利に戦う目玉づくりだったとしても、幼保無償化は年間約8千億円の予算を要する。補助金を当て込んだ幼稚園の便乗値上げなど、さまざまな問題点が指摘される中で始める政策にしては巨額だ。納税者としても、しっかり効果を見極めたい。

2019年10月15日 無断転載禁止