結愛ちゃん虐待死/対策の実効性高めたい

 東京都目黒区で昨年3月、当時5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんを虐待して死なせたとして保護責任者遺棄致死や傷害などの罪に問われた父親雄大被告の裁判員裁判で、東京地裁は懲役13年の判決を言い渡した。検察側は過酷な虐待や他の罪でも起訴されていることを理由に挙げ、同種事件を巡る有罪判決の量刑よりも重い懲役18年を求刑していた。

 地裁判決は「食事制限や暴力は、しつけから懸け離れ、自らの感情に任せた理不尽なものだった」とし「死亡を具体的に想定できたのに虐待発覚を恐れるという身勝手極まりない保身から医療措置を受けさせず甚だ悪質」と批判。従来の量刑傾向の中で「最も重い部類」と位置付けた。

 元妻の優里被告は一審で懲役8年の判決を受け、控訴している。この事件では虐待の背景に潜む配偶者DV(ドメスティックバイオレンス)への不十分な対応をはじめ、関係機関による情報共有・連携の不足や兆候の見逃しなど、深刻化する児童虐待に絡む多くの問題が浮き彫りになり、政府も対策を講じている。

 しかし、その後も相次ぐ虐待事件で、子どもの安全確保やDVへの対応、関係機関の連携強化などの対策はいずれも掛け声倒れに終わっている。人員不足の影響もあるが、幼い命を守るために知恵を絞り、対策の実効性を高める取り組みが求められる。

 判決などによると、一家が以前住んでいた香川県の児童相談所は2016年と17年の2回、結愛ちゃんを一時保護。昨年1月、東京都目黒区に転居後、虐待は激しさを増した。雄大被告は「太った」と食事を制限。午前4時に起きるなど困難な課題を与え、できないと暴行を繰り返した。「しつけがうまくいかず、怒りが強くなった」と被告は法廷で振り返った。

 1日に汁物1杯の日もあり、結愛ちゃんはわずか1カ月余りで4キロも体重が減り、衰弱。ノート片に「もうおねがい ゆるして」などと書き残し、昨年3月初め亡くなった。体に170カ所以上のあざや傷があった。

 優里被告は暴行を認識しながら、容認したと一審判決で認定された。しつけを巡り雄大被告に連日、説教されるなど心理的DVを受けていた。

 香川の児相から緊急性を引き継がれなかったこともあり都の児相は結愛ちゃんと接触しないままだった。このため政府は、虐待通告から48時間以内に子どもの安全を確認できない場合、児相が立ち入り調査を行うルールを決定。DV対策強化も打ち出した。

 さらに児童虐待防止法などを改正し、体罰禁止を明文化。親権者に必要な範囲で子を戒めることを認める民法の「懲戒権」について、削除も含め検討するとしている。

 だが虐待はやまず、千葉県野田市で今年1月に小学4年の女児が亡くなった事件で児相はDV情報を把握しながら虐待のリスク分析に生かせず、安全確認の不十分さも指摘された。札幌市で6月に2歳女児が衰弱死した事件では児相が安全確認を怠り、警察との連携にも問題があった。

 全国の児相が扱う虐待の相談・通告は年間16万件近い。人員不足の中でも市町村と協力して家庭訪問の回数を増やして子どもの安全確認を徹底するなど、虐待の兆候を見逃さないために何ができるか検討を重ねていく必要がある。

2019年10月17日 無断転載禁止