日韓首相会談/対立解きほぐす契機に

 安倍晋三首相が天皇陛下の「即位礼正殿の儀」参列のため来日した韓国の李洛淵(イナギョン)首相と会談した。韓国が破棄を決定した日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)が失効するまでちょうど残り1カ月のタイミングだ。元徴用工訴訟に端を発した異例の対立状況を解きほぐす契機にしたい。

 元徴用工訴訟を巡っては、1965年の日韓請求権協定で解決済みとする日本に対し、韓国は個人の請求権は協定に含まれていないとの韓国最高裁判決に沿った日本企業による賠償を求めている。

 今回の首相会談は通訳を交え約20分という短時間だったため、元徴用工訴訟への対応について突っ込んだ話はでなかったが、互いの考えを直接確認したことは、それなりの意味はある。

 韓国も日韓請求権協定について「尊重、順守する」との立場だが、「解釈の相違もある」と元徴用工に対する賠償問題では認識が異なる。この「解釈の相違」を解消すべく外交当局間の折衝を中心とした対話は続けるべきだ。

 韓国の請求権協定に対する「尊重、順守」のアピールが、「国際条約に違反した状態を続けている」とする日本からの非難をかわすためだけであってはならない。

 両首相が会談で、悪化した日韓関係を「これ以上放置してはならない」との点で一致し、さまざまなレベルの対話を継続、加速させることでも見解を同じくしたことは幸いだ。これ以上、やり合っても意味がないことは、この3カ月間の動きを見れば分かるだろう。日本製品の不買運動や日本への韓国人観光客の激減は日本だけでなく韓国の関連企業にも痛手となっている。

 日本が輸出管理の「ホワイト国(優遇対象国)」から韓国を除外した8月以降、韓国は外務省だけでなく大統領府の高官を毎月のように日本に派遣し、首相官邸サイドと接触を図っている。日本も今後、韓国に政府高官を派遣するなどして、対話を加速化させるべきだろう。少なくともGSOMIAの撤回見直しを韓国に強く働き掛けることが必要だ。

 歴史問題での対立が通商分野に飛び火し、ついには地域の安全保障に影響を及ぼす段階に至ってしまったことは、日韓両国にとって損失だ。

 北朝鮮が短距離弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の試射を続けている状況で、GSOMIAという意思疎通の枠組みを失うことは、日米韓の連携にも否定的な影響を及ぼす。

 韓国の国防省もGSOMIAには維持するだけの価値があるとの見解を示しているという。韓国の対日外交は大統領府主導で展開されているといわれるが、現場の声をくみ取ってほしい。

 残る1カ月で全てを解決することは不可能だろうが、今回の首相会談を危機的な日韓関係を立て直す機会とすることは、日韓の両指導者に課せられた責務だ。

 11月上旬には東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会合が、中旬にはアジア太平洋経済協力会議(APEC)が予定されている。こうした国際会議を利用し日韓の首脳が正式な会談ではなくとも直接対話することは必要だろう。お互いにどういった解決方法があるのかを探り合うことが不可欠だ。

2019年10月25日 無断転載禁止