台風19号被害/事前避難の徹底を

 東日本を中心に甚大な被害をもたらした台風19号による死者、行方不明者は90人を超えた。このうち高齢者が多くを占めている。台風は雨量やルートが予想できるのだから、行政は被害の大きさを深刻に受け止め、避難対策を強化すべきだ。

 多くの地方自治体では自主防災組織や消防団、近所の人が高齢者らと一緒に避難する計画が作られている。だが、差し迫った状況になれば、これらの人は避難の支援以外の仕事も求められる。それだけに確実な避難方策とは言い切れない。

 浸水が始まってからの避難や夜間の避難は危険が伴う。このため同じ家の上の階に移ったり、逃げることをためらったりするケースもある。

 安全を十分確保しこのような事態に陥らないためには、1人暮らしの高齢者ら災害弱者を中心に、台風が来襲する1日前、2日前に避難することを徹底すべきだ。避難所まで自治体がマイクロバスで送迎したり、近所の人らと一緒に車で避難したりする方法などが考えられる。自治体で具体策を検討してほしい。

 事前に避難が完了していれば、たとえ浸水したり、土砂災害が起きたりしても、救助の活動は要らない。すぐに復旧に取り掛かることができる。完全な事前の避難は、早期の復興にも役立つことを忘れてはいけない。

 台風19号によって埼玉県川越市の特別養護老人ホームとケアハウスでは、入居者ら約200人が一時孤立したものの全員が無事に救助された。多くの職員が臨時出勤して高齢者らを2階に避難させることで命を守ることができた。

 これは2016年、台風に伴う浸水によって岩手県の高齢者施設で、入所者9人全員が死亡した災害の教訓を生かしたと言える。この災害を受け国は、川の氾濫などで浸水が想定される区域にある高齢者施設や学校、病院などを「要配慮者利用施設」として対策を導入した。避難先や移送手段などを定めた避難確保計画の作成や訓練の実施を義務付けている。

 川越市の施設は計画を策定していたが、全国で策定済みの施設は4割にも満たない。今後は計画の策定や訓練にとどまらず、事前の避難も義務付けるべきである。

 避難所には現在も4千人近くの人が身を寄せている。台風19号では避難所が浸水し、再避難した例もある。近年は想定外の雨が目立つ。本当に安全な場所なのか避難所の立地の再点検が不可欠だ。

 役所の庁舎や議会棟を避難所に使った例もあった。他の自治体でも避難者が想定よりも多くなる事態に備え、使える施設を調べておきたい。

 避難所には、大地震への備えと同様に非常用発電機や燃料、水、食料を3日分は備蓄しておきたい。さらに生活の質の向上も緊急の課題だ。床に直接寝ると寒さが体にこたえ健康を害する恐れもある。段ボールを使った簡易ベッドや仕切り、暖房器具の備蓄、供給体制を地域ごとに整えることも求められる。

 災害ごみは昨年の西日本豪雨を上回る数百万トンが発生すると予測されている。各自治体が持つ焼却施設の処理能力は限られる。連携しながら早期の処理を目指してほしい。今後に備えて環境省は、より広域的な災害ごみ処理の協力体制づくりを主導すべきだ。

2019年10月27日 無断転載禁止