世事抄録 感動するには訳がある

 ビールを手にテレビのラグビーワールドカップに見入った秋だった。強くなった日本代表の試合や健闘をたたえ合うノーサイドの姿に胸打たれた。感動は、新しいラグビーを目指した「地獄」の特訓を知ることでさらに大きくなる。それは論理的な技術練習や科学的な体力づくりではない。外国生まれの多い代表が、キャプテンのもと自主的に日本文化を学び、日本代表になる意味を全員で共有したことだ。グローバルなラグビー精神と代表とは何かを融合した意思(魂)づくりの過程が、強く美しい代表にまとめたのだ。

 IT企業に勤めていた頃、時流をとらえた企業になるための組織変革に参加した。器だけでなく経営者以下社員の当事者意識と意識変革が必須だったが、「仏作って魂入れず」。理念や組織はつくったが、社員の意識まで変えることはできなかった。

 人は簡単には変われない。集団になると得体(えたい)の知れない組織の意思となる。新設された創造的な活動をする団体や地域密着の集団でも、趣旨とは真逆な旧態依然とした体質を目にする。変わることは難しい。だが自分たちから変わろうと実行しなくては、誰からも期待も支持もされない。

 今回の代表チームは、技術や体力の強化とともに代表を背負う魂の変革を通し、成長することの素晴らしさを試合で示した。それが変わることを拒む私たちの心も揺さぶったのだ。

(埼玉県在住、島根県奥出雲町出身・鬼灯)

2019年10月31日 無断転載禁止