英語民間試験見送り/受験生本位で出直せ

 大学入試センター試験の後継として来年度から始まる「大学入学共通テスト」で予定されていた英語民間検定試験の導入が見送られた。全体像が固まらぬままの見切り発車に受験生の不安が広がる中、萩生田光一文部科学相の「身の丈に合わせて頑張ってもらえば」という発言が飛び出し、批判が集中。公正さへの疑問も強まった結果だ。制度を根本から見直し、受験生本位で出直すべきだ。

 受験生をずさんな実験の犠牲にしないため、延期は当然だ。試験の日程や会場すらはっきりしないのに「もう決まったこと」と強引に進めようとしたのが間違いで、そもそも大学入試を民間に丸投げする計画自体に無理があった。

 新制度は「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測るため、英検やGTECなど6団体、7種類の試験から選んで来年4~12月に2度まで受験できる仕組みだった。試験によっては受験料が1回2万円を超し、会場が設定されない県もあるなど、地方の家計が苦しい受験生は、とりわけ不利になる可能性が高かった。

 異なる種類の試験を比較する難しさや採点方法など公平・公正さへの不信も拭えず、多くの大学が民間試験活用を見送る事態に陥っていた。そんな中、飛び出した「身の丈」発言は、まさにこの制度が抱える矛盾を白日の下にさらした。

 国は「大学無償化」を目指し、低所得世帯の学生の授業料を免除するなど格差解消策を打ち出す。だが予定されていた民間試験活用の制度は、お金さえあれば何度でも練習で受けられ、裕福な家庭ほど有利な仕組みだった。これではアクセルを踏みながら、ブレーキを踏むようなものだ。

 萩生田文科相自身も「裕福な家庭の子が回数を受けてウオーミングアップできるようなことはあるかもしれない」と、そのまま認めていた。

 発言は経済的な格差拡大を容認したと受け止められた。説明不足だったとして「どのような環境にいる受験生でも力を最大限発揮できるよう頑張ってもらいたいとの思いだった」と釈明したが「本音」が漏れたというべきだろう。

 教育基本法は「教育の機会均等」を定める。本来、誰にでも公正であるべき入試が家庭の経済状況や居住地によって有利、不利が出てはならないはずだ。ところが、この制度は最初から格差助長を織り込んでいた。

 萩生田文科相は、テレビ番組で格差助長を指摘されると「『あいつ、予備校に通っていてずるい』と言うのと同じ」とかわそうとした。予備校ではなく、本番の入試を何度でも練習で受けられるような仕組みなのに、多くの人がおかしいと思いながら、走り始めた制度を誰も止められず、ここまで来てしまった。

 既に英検は予約の申し込みを受け付け、1日からは受験に必要な「共通ID」の申請も始まるぎりぎりのタイミングでの延期だ。全国高等学校長協会が実施延期と制度見直しを求める異例の要望を提出するなど、民間試験に反対する声が高まっていたのに、ここまで受験生を振り回した文科省の責任は大きい。

 4技能重視という趣旨を実現するには、この制度でなければいけなかったのか。幸か不幸か時間はできた。この機会に「受験生ファースト」で根幹から考え直すべきだ。

2019年11月3日 無断転載禁止