いじめ50万件超え/組織的対応の徹底を

 文部科学省の2018年度問題行動・不登校調査で、全国の国公私立小中学校と高校、特別支援学校のいじめは前年度より13万件近くも増え過去最多の54万3933件に上った。児童生徒たちが心身に重大な被害を受けたり、長期の欠席を余儀なくされたりする「重大事態」も前年度から128件増の602件あり、過去最多となった。

 13年に施行されたいじめ防止対策推進法は「児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と広く定義。それまでは問題にならなかった冷やかしや悪口なども含め網を張り、いじめの早期発見を進めるよう学校などに求めている。最近は年度ごとの調査結果を公表するたびに全体の件数はほぼ10万件ずつ伸びてきた。

 文科省は「積極的な認知」の結果と前向きにとらえている。積極的な認知は、いじめを小さな芽のうちに見つけ、早めの対応で摘み取ることを目指す。しかし芽を除き切れず、重大事態という深刻なケースが増え続ける厳しい現実が浮き彫りになった形だ。

 もともと多忙な教員があらゆる出来事に目配りするのは難しいとの声もある。認知すれば、被害者と加害者の双方から話を聞くなど教員の負担は増える。それを1人に負わせず、教員間で情報共有や役割分担を行う組織的対応を徹底する必要がある。スクールカウンセラーなど外部人材ももっと活用していきたい。

 いじめの認知件数は小学校が42万5844件で、低中学年の増加が目立つ。小1~小4で、いずれも約2万件増えた。中学校と高校はそれぞれ9万7704件、1万7709件。特別支援学校は2676件だった。いじめの中身はどの学校種でも「冷やかしやからかい」「悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が5~6割を占めている。

 全体では「軽くぶつかられたり、遊ぶふりをしてたたかれたり蹴られたりする」も11万6311件あった。「ネットいじめ」による誹謗中傷は1万6334件。高校では、いじめの2割近い。

 いじめ防止法に規定された重大事態は15年度に前年比135件減の314件になったが、その後は16年度396件、17年度474件と増加。18年度は602件に達した。骨折など大きな被害が270件、年間30日以上の不登校が420件を数え、両方に該当するケースもあった。

 被害を深刻化させないためには早期発見と、その後の地道な対応が求められるが、現場からは「早めに気付いても人手も時間も足りない」との声が聞こえてくる。小学校の担任制や中学校の部活などで教員は多くの業務を抱え、文科省の調査では公立中で6割、公立小でも3割が「過労死ライン」を超えている。

 そんな中、埼玉県川口市立中で起きたいじめを巡る訴訟で9月、市はいじめ防止法上のいじめの定義に「欠陥」があるとする書面を提出した。広すぎる定義は社会通念上のいじめから懸け離れる危険があるとし、法改正を求める意見は以前からある。ただ定義に手を加え、いじめの範囲を絞り込むと、見落としにつながる恐れも出てくる。

 いずれにせよ、学校や教育委員会がいじめの兆候を軽くみたり、放置したりしないよう態勢をしっかり固めることが不可欠だ。人的補充についても検討が必要だろう。

2019年11月5日 無断転載禁止