世事抄録 田舎のよさを伝える

 島根の良さを東京で語り始めたのが古事記1300年記念の前年2011年のことだ。今年も先輩知人数組を観光に誘い、松江の友と杯を交わしてもらった。次回は私の故郷を散策したいと言う。

 先月、東京の仕事仲間と松江で飲み、奥出雲の古民家やたたらの旧家、神話や古代、近世の世界を案内した。変わらぬ景色に私が過ごした日々、神話との出合いや故郷への思いを話す。車を降りると、素朴な風景に似合ういい話だとうなずき、また来たいと言う。何がいいのではない。松江の夜や地元の人との気取らぬ語らいが、体験した自然や文化を一層味深いものにし、安らぎを得たらしい。

 物語マーケティングという手法がある。商品機能でなく、商品から得る喜びや癒やしなど情緒的な価値を物語にする表現だ。観光案内の場合も同じだ。なぜ神話や遺跡を紹介するのか、なぜ素晴らしいと感じるのか、観光客の目線で自分の思いを整理し、感動や思い出につながる価値を伝えることが大切だ。

 今春、松江を案内した仕事のお客さまが、来春は奥出雲に行こうと言う。なぜですかと問うと、興味があるからだと。仕事の姿勢も観光案内の姿勢も同じだ。仕事に対する考えが故郷への考えだ。自信の持てる田舎だからこそ、文化や人に交わってほしい。そんな思いが形になれば、また一人アクティブな島根ファンが誕生する。

(埼玉県在住、島根県奥出雲町出身・鬼灯)

2019年12月12日 無断転載禁止