介護保険制度見直し/負担増先送りでいいのか

 2021年度に予定される、3年に1度の介護保険制度見直し案が固まった。焦点になっていた、サービス利用時の2割自己負担の対象者拡大は先送りされ、全体として小粒な内容となった。

 75歳以上の後期高齢者の医療については、医療機関の窓口で支払っている原則1割の自己負担を、一定所得以上の人は2割に引き上げる方向が決まっている。そのため高齢者に「二重負担増」を強いるのを避けた形だ。

 ただ今回先送りすれば、次の見直しまで3年待たなければならない。その間に介護保険の財政が悪化すれば、結局は将来世代がさらなる負担増を求められる懸念がある。必要な改革は、早めにやる方が、幅広い世代で痛みを分かち合え、世代間の公平が保ちやすいことを再確認したい。

 介護保険制度は高齢化と核家族化が進む中、高齢者を社会全体で支えるため00年度に導入された。介護の必要度合いを軽い方から「要支援1、2」「要介護1~5」と7段階に分類。費用は国、地方の公費と保険料、利用者の自己負担で賄う。40歳以上が加入し、原則65歳以上が介護サービスを利用できる。

 ただ高齢化が進み制度導入から約20年で要介護認定者は3倍に増え、総費用も3倍の10兆円超に膨らんだ。22年からは団塊の世代が75歳以上になり始め、介護ニーズがさらに急増する。

 このため厚生労働省は、所得水準に関係なく1割が続いていた自己負担割合を、15年から年収280万円以上(単身で年金収入だけの場合)の人は2割とし、うち現役並みの高所得者は18年から3割に引き上げた。それでも1割負担が利用者の90%超を占めており、22年を前に見直しが必要との声が高まっていた。

 今回決まったのは、介護施設を利用する一部の低所得高齢者について食費の月額自己負担の2万2千円引き上げ。また高所得世帯が介護サービスを受ける際の自己負担の月額上限を、現在の月4万4400円から、年収により9万3千円、14万100円へ引き上げることになった。

 しかし「本丸」と目された2割負担拡大のほか、サービス利用時のケアプラン有料化、要介護1、2の生活援助サービスの市町村への移行などは見送りに。これは、政府の全世代型社会保障検討会議の中間報告が「一定所得以上の後期高齢者の医療費自己負担2割」を打ち出したため、反発の拡大を恐れ改革メニューから削ったとみられる。

 同検討会議は、医療、年金、介護、労働と幅広い分野の改革に取り組むとの触れ込みとは裏腹に、中間報告では子育て支援策とともに介護保険制度見直しについての具体案をほとんど盛り込まなかった。今年6月の最終報告に向け、さらに踏み込んだ議論を求めたい。

 親の介護に直面する人たちの多くは、企業でも中核を担う働き盛りの世代だ。介護離職したり、女性の就労を阻んだりすることがないよう仕事と介護の両立を図るのが介護保険制度だ。経済を成長させながら超高齢社会を乗り切るには、この制度の安定化は不可欠だ。

 50年には、1人の65歳以上を1.2人の20~64歳で支える「肩車型社会」を迎える。子や孫の世代を守るために、改革を着実に進めるべきだ。

2020年1月13日 無断転載禁止