台湾総統選で蔡氏圧勝/中国は民意を尊重せよ

 台湾の総統選で、対中独立志向の与党、民主進歩党(民進党)の現職、蔡英文氏が親中路線の最大野党、国民党の韓国瑜・高雄市長らを総統選史上最多の得票数で破り、再選を果たした。

 最大の争点は対中政策。民進党は一昨年11月の統一地方選で大敗し、一時は蔡氏再選が危ぶまれたが、昨年6月以降、香港で「一国二制度」の機能不全に抗議する反中国デモが激化。台湾でも対中警戒感が強まり、蔡氏への追い風となった。

 中国は同制度による中台統一を呼び掛けてきたが、蔡氏は固く拒否。対中関係の改善を訴えた韓氏を抑えた。今回の選挙で、台湾の有権者は一国二制度による統一に明確なノーを突き付けた。

 蔡氏は当選後、「平和、対等、民主、対話」を掲げて台湾海峡の長期的な平和と安定維持のため中国に協議を呼び掛けた。中国は選挙結果を重く受け止め、高圧的な対応から台湾住民の民意を尊重する融和的な政策に転換し、対話に応じるべきだ。

 蔡氏の得票数は約817万票で、1996年から行われている直接総統選挙で過去最多。韓氏は約552万票、投票率は74.9%と高かった。民進党は同時に行われた立法委員(国会議員、定数113)選でも61議席を獲得して過半数を維持した。

 蔡氏は「民主主義と進歩の価値、改革と団結の道を選択した」と支持者に謝意を表し、行政改革や経済振興、国家安全政策を通じた主権の擁護に努める方針を示した。

 2016年に就任後、「一つの中国」に関する中台合意を認めなかった蔡氏を中国は敵視し、強引な孤立化戦略を展開。台湾が外交関係を持っていた22カ国のうち7カ国を奪い、世界保健機関(WHO)総会から閉め出した。選挙前には大陸から台湾への旅行者を制限するなどの蔡政権への露骨な嫌がらせをした。

 統一地方選で民進党は年金改革や経済不振など内政も批判されて敗北。韓氏は民進党の南部の地盤、高雄市を攻略し、総統候補への切符を手にした。韓氏の支持率は蔡氏を上回っていたが、香港デモの激化で逆転した。

 蔡氏は選挙後「民主的な台湾、民選の政府は脅しやどう喝に屈しないことを北京当局は理解してほしい」と訴えた。しかし、中国政府は今後も蔡政権に圧力をかける可能性を示唆している。

 米中対立が激化する中、米国は台湾への兵器売却を決めるなど蔡氏支持を鮮明にしてきた。2期目の蔡氏は米中のはざまで、台湾の自主性を堅持しながら、中国との緊張緩和の道を探る難しいかじ取りを迫られている。

 昨年11月の香港の区議会(地方議会)選挙では民主派が8割以上の議席を獲得して圧勝。中国にとって、台湾の選挙は香港に続く手痛い敗北だ。台湾、香港の有権者は非民主的な中国本土との一体化をはっきりと拒絶した。

 茂木敏充外相は蔡氏に祝意を表し「台湾は緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナー」「非政府間の実務関係として、日台間の協力と交流の深化を図る」との談話を発表した。自由と民主主義の価値観を共有する日本は、台湾や香港の人々のため中国に対して民主主義を容認するよう積極的に働き掛けていきたい。

2020年1月16日 無断転載禁止