副総理の言葉

 「2千年の長きにわたって一つの言葉、一つの民族、一つの王朝が続いているなんていう国はここしかない」。麻生太郎副総理兼財務相が福岡県で先日開いた国政報告会でこんな発言をし、その後訂正、謝罪した。政府が昨年施行したアイヌ施策推進法でアイヌ民族を「先住民族」と明記したこととの矛盾が指摘されていた▼麻生氏は民間団体が投票を呼び掛けた、政治家による昨年の性差別発言のワーストに2年連続で選ばれたばかり。問題発言には事欠かない。「また麻生さんか」と苦笑しつつ、寛大な心で受け止めている人もいるかもしれない▼麻生氏の発言で忘れられないのは、7年前に憲法改正に絡んで出た「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気が付かない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」だ。ナチス政権を引き合いに出した▼3年前には派閥研修会で「(政治家を志した)動機は問わない。結果が大事だ。何百万人を殺したヒトラーは、いくら動機が正しくても駄目だ」と動機を正当化するかのような発言をしている▼いずれも後に撤回しているが、ヒトラーやナチスに強い関心があるらしい。言うまでもなく、ヒトラー率いるナチスの行動原理の一つは極端な民族主義だった。これを踏まえて今回の「一つの民族」発言を聞くと、どこか気味が悪い。寛大な心の持ち主も笑みが消えるのではないか。(輔)

2020年1月22日 無断転載禁止