世事抄録 女正月

 令和初の年末年始は御難続きであった。暮れに妻の左足に満タンの湯たんぽが落下。内出血で紫に腫れ上がった。指にギプスが巻かれ、痛みに足を引きずりながらも、長女、次女一家の帰省に備え、妻は正月料理のために台所に立った。

 私も病院や買い物の運転手、大掃除など例年以上に受け持った。ようやく年越し準備を終え、次女一家も帰ってきた。再会の喜びもつかの間、次女がインフルエンザを発症、娘婿にも感染。幸い中学生の孫にはうつらなかったが、老人2人で感染の恐怖におののきながら、看病と正月行事に追われた。長女はウイルスがまん延する家に帰るのを断念した。

 核家族、共働き家庭の増加で、男性も家事をするのが当たり前になって久しいが、私が幼い頃の年末年始は忙しいのはもっぱら女性だった。特に正月は大人の男の祭りごとのようで、三が日は親戚や同僚、近所の人などがやって来ては酒盛りが続いた。母は1人で客をもてなし、4人の子の世話をした。まぶたに浮かぶ正月の母は、いつも白いかっぽう着姿である。

 1月15日の小正月は、忙しかった女性たちの休息日として女正月とも呼ばれる。品川鈴子氏主宰の俳誌「ぐろっけ」に俳人・堤節子氏の「小正月湯舟に深く肩沈む」という句がある。亡き母は独り自分を慰めたことだろう。わが家は妻の足が完治したら、新たに女正月をやりたい。

2020年1月23日 無断転載禁止