ロシア憲法修正/議会を基盤に支配継続へ

 ロシアのプーチン大統領が現行憲法の修正に乗り出した。恒例の年次報告で説明した修正案の骨子によれば、現在は大統領に集中している重要な権限を議会へ移す。2024年に大統領の任期が切れた後も、議会を基盤に支配を継続する意図が明らかだ。

 議会の強化は、一見すれば民主化の進展とも受け取れる。だがプーチン体制下の議会には、実質的な野党が存在しない。異論を封じ込めた上で、恣意的に憲法を変え、長期独裁を「合法化」する行為は時代に逆行する。

 憲法修正の結果、「強い大統領」と「弱い議会」の関係が「弱い大統領」と「強い議会」へと逆転する。新しい政治体制の中で、プーチン氏が具体的にどのような地位を占めるかはまだ不明だ。だがプーチン氏が出身母体の治安機関の力を背景に、絶対的な権力を維持する構図は変わらないだろう。

 修正案によると、大統領は連続2期を限りに去らねばならない。プーチン氏のように、いったん首相になった後に返り咲くことはできなくなる。自分が辞めた後で「強い大統領」が出現する危険を排除するためとみられる。

 下院は大統領が指名する首相候補に拒否権を行使できる。これまでは形式的に「同意」するだけだった。大統領は首相が任命する閣僚人事を拒否できない。これにより、政府指導部の人事権は大統領に代わり議会が掌握する。プーチン氏は下院議長など、議会の動向を統制できる地位に就く可能性が強い。

 今回の憲法修正案で明らかになったのは、大統領や首相といった公的な地位ではなく、プーチン氏という個人に絶対的な権力が付随して回る実態である。最高法規さえ自分の都合で変えてしまうようでは、民主主義や法治主義とはほど遠い独裁体制と言われても仕方がないだろう。

 このような体制下では個人への崇拝が強まり、腐敗と汚職がまん延する。石油や天然ガスなど資源の恩恵を受けている人々は、特権を守るためプーチン体制の存続を望む。しかし利益の体系から排除された人々、特に若者は希望を持てず、優れた頭脳の海外流出が深刻化しているという。

 プーチン氏と彼の周辺が、なりふり構わず権力に執着する背景には、失権すれば刑事責任を問われたり、政治的な迫害を受けたりするという恐怖感もあるのではないか。

 1999年に当時のエリツィン大統領がプーチン氏を後継者に指名した際、エリツィン氏は自分と家族を刑事訴追しないとの約束を、事前にプーチン氏から取り付けた。資源が生む利権を側近たちに配分してきたプーチン氏も疑惑とは無縁ではない。

 プーチン氏の隠れた権力基盤は、出身母体の治安機関である。旧ソ連の国家保安委員会(KGB)の後身である連邦保安局は、体制の権威を高めるために、ソチ冬季五輪で組織的なドーピングを主導した。

 その後の調査でも事実の隠蔽が続き、ロシア選手団は東京五輪への参加資格を奪われた。スポーツ大国の相次ぐスキャンダルは五輪を主催する日本の利益も損なってしまった。治安機関に依拠する独裁体制は、国際社会にも好ましくない問題をもたらす。各国はロシアの民主化後退を座視するべきではない。

2020年1月25日 無断転載禁止