新型肺炎で緊急事態宣言/「減災」の発想が必要だ

 中国湖北省武漢市を基点に感染拡大が続いている新型コロナウイルスによる肺炎について、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言した。

 中国への渡航制限勧告は含まれていないが、現実には宣言によって人やモノの動きに大きなブレーキがかかり、既に出ている経済活動への影響はさらに拡大するだろう。WHOは1月23日時点では宣言を見送ったが、日本など中国以外への感染拡大を受け1週間後、宣言に踏み切った。

 政府はこの肺炎を、感染症法に基づく「指定感染症」とすることを既に決めていたが、緊急事態宣言を踏まえ、政令施行の前倒しを決めた。政府には、リスクの大きさを冷静に判断しながら、事態の変化に応じた柔軟な対応を求めたい。

 国内でも、武漢市への渡航歴がない人の感染が明らかになった。懸念されていた「人から人」への感染である。これまでは感染源をたどることができており、症状が重い人だけから感染が広がる病気であれば封じ込めは可能だ。

 しかし現実には、軽症者や潜伏期間中の人から感染が広がる可能性が指摘されている。武漢市からチャーター機で帰国した人の中にも症状のない感染者が見つかった。

 症状がない人から感染が広がるなら封じ込めは難しい。今後の対策は国内での感染拡大を見据えたものにすべきだろう。重症者が確実に高度医療を受けられる仕組みを守りつつ、軽症者の医療の受け皿を市町村レベルで検討し整えておく必要がある。全体としての被害を減らす、現実的な「減災」の発想が必要だ。

 新型ウイルスについてはまだ分からないことも多いが、これまでの情報によれば幸い重症になる人は少ない。一方で高齢者や、高血圧、糖尿病といった持病のある人はリスクが高いとの報告がある。

 感染症対策は地震などの災害対策と共通する点がある。一人一人の日頃の備えや心掛けがリスクの低減に役立つ。個人ができる予防策として厚生労働省や感染症の専門家は「インフルエンザと同様の感染症予防策を」と繰り返し強調する。このウイルスの感染形態は、せきやくしゃみのしぶきで広がる飛沫感染、ウイルスが付着したドアノブなどに触れた手で鼻や口を触ることによる接触感染が主体と考えられている。予防策の筆頭に挙げられるのが、せっけんを使ったこまめな手洗いだ。

 マスクへも関心が高いが「どんなマスクを着けるか」よりも「どう着けるか」が大切だという。具体的には、鼻から顎までしっかり覆い、マスクと頬の間に隙間がないようにする、使ったマスクは再利用せず捨てるなどだ。十分な休養と栄養により、体調を整えることも大切だ。

 現状では、こうした地道な対策を日々実践し、研究で新しいことが分かったら対策を追加するのが合理的だ。基本的な感染症対策が身に付けば、新型ウイルスだけでなく多くの感染症を防ぐ力になる。

 新しい感染症は人々に不安を与えるため、デマや不確かな情報が流れ、そのために傷つく人たちが出る可能性が高い。この点でも災害時と同様、情報は信頼できる発信元かどうかをきちんと確かめた上で利用したい。

2020年2月1日 無断転載禁止