予算委論戦/議会を壊すのは誰か

 これが安倍晋三首相の言う「謙虚に受け止め、丁寧に対応する」姿なのだろうか。

 一問一答形式の本格論戦、衆参両院の予算委員会の第1ラウンドが終了した。野党は、公費で開催する「桜を見る会」の私物化問題、国会議員を巻き込んだカジノを含む統合型リゾート施設(IR)を巡る汚職事件、辞任閣僚の公選法違反疑惑の3点セットを集中的に追及したが、真相解明は一向に進まなかった。

 ひとえに数々の疑問に真摯に向き合わない、首相はじめ政権側の不誠実な対応が要因である。施政方針演説ですっぽりと抜け落ちていたことも含め、時間が経過すれば忘れられると高をくくっているのではないか。長期政権のおごりは深刻だ。

 安倍首相のおざなりな答弁話法は一段と進行した。特徴は、都合の悪いことは隠して逃げる、”前例”を持ち出して正当化する、ほかに責任を転嫁する、の三つだ。とりわけ桜を見る会問題では、それがあらわになった。

 招待者名簿を復元するための調査は一切拒否、廃棄した証拠を示すコンピューターの履歴の提示も応じないままだ。公文書管理法違反と認めざるを得なくなった公文書のずさんな管理も、実際には開催が見送られた旧民主党政権時代を踏襲したもの、と言い訳する。

 参加者が増えたことは「長年の慣行」、多数の地元後援会を招いた点も「歴代首相の時も地元の方々がたくさん来ていた」とはぐらかす。第2次安倍政権以降に急増した事実から目を背けているのは明らかだ。

 無理な理屈を振りかざすから、答弁内容に矛盾が生じ、破綻していく。「幅広く募っているという認識だった。募集しているという認識ではなかった」と意味不明な弁明をしたのがその象徴である。招待者の取りまとめは内閣府としながら、招待状の発送前に、首相の事務所が参加者に通知していたことも発覚、見苦しい釈明に追われた。

 IR汚職では、収賄罪で起訴された議員を担当副大臣に任命した責任があるにもかかわらず、捜査を理由に詳細を語らない。だがカジノ事業の推進方針は不変と強弁する。公選法違反の疑いで捜査を受けている自民党議員に対し、昨年の参院選前に党本部が破格の資金を支出したことも「全て党の執行部に任せている」と人ごとだ。

 首相は「堂々とした政策論争を行いたい」と強調する。確かに膨れ上がった予算案、激動する国際情勢、新型肺炎問題、持続可能な社会保障制度の構築、中東への自衛隊派遣など議論しなければならないテーマは山積している。

 一見すると首相の言い分はもっともらしい。しかし政策課題に入るには、行政府の公平・公正性や信頼の回復が何よりも大前提となる。堂々とした政策論争を阻んでいるのは誰なのか。首相の発言は、野党が疑惑追及一辺倒だと印象づけ世論の批判の矛先を向けようとしているのだろう。

 桜を見る会は、首相夫妻と親しい人たちが厚遇されているのではないかという森友、加計両学園問題にも共通する疑念だ。それを率先して晴らすのは首相本人しかいない。このままでは言論の府は嘲笑の対象となり壊れていく。本来の機能を取り戻すため、与党も目を覚ますべきときだ。

2020年2月3日 無断転載禁止