新型肺炎と経済/中国経済の悪化に備えを

 新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が止まらず、世界経済に暗い影を落とし始めた。米中貿易摩擦の影響などで減速している中国経済が急激に悪化すれば、その影響は甚大だ。特に昨年10月の消費税増税で景気後退色が強まっている日本にとっては、大きな打撃となる恐れがある。十分な備えが必要だ。

 3日に取引を再開した中国・上海株式市場の株価は、春節(旧正月)の連休前に比べて7.72%安と急落した。下落率は約4年5カ月ぶりの大きさ。中国人民銀行は混乱を防止するため、予告通り1兆2千億元(約19兆円)の資金を金融市場に供給したが、市場の不安を抑えることはできなかった。

 新型肺炎は実体経済にも既に深刻な打撃を与えている。中国の専門家の試算によると、春節の連休中に全国的に人出が大きく減少したため飲食、観光、映画の3業種だけで経済的損失が計1兆元(約16兆円)を超えたという。

 中国の実質国内総生産(GDP)の成長率は、昨年10~12月期に6.0%まで低下したが、新型肺炎の影響で今年1~3月期は5%を割り込む可能性があるとの予測が出ている。中国政府は発生源とされる湖北省武漢市を封鎖し、国内外の団体旅行を禁止するなどの厳しい措置を取っており、事態が長引けば世界の景気を押し下げる恐れがある。

 新型肺炎による経済的打撃は2002~03年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行したケースを上回るのではないかとの懸念が強まっている。当時も中国の成長は一時的に急減速したが、中国のGDPが世界に占めるシェアは4%にすぎず、世界経済への影響は限定的だった。今は世界2位の16%だ。世界経済への影響は比較にならない。

 中国政府には、新型肺炎の封じ込めのために全力を挙げるのはもとより、世界経済全体への影響を認識し、景気の腰折れを回避するために、早期の経済対策を検討するよう求めたい。特に財政政策は実施する余地が大きいと思われる。

 日本経済への影響も深刻だ。中国人を中心とする訪日外国人の減少で、インバウンド消費が大きく落ち込んでいる。大手百貨店4社の春節期間中の訪日外国人客による免税売上高は前年と比べてそろって減少し、4社中3社が2桁減となった。観光業も直撃を受けている。有名観光地のホテルでは中国人の宿泊予約が大量にキャンセルされる例が相次いでいる。

 製造業への影響も大きい。武漢市にはホンダや日産自動車の拠点があり、自動車部品や卸売業など199社の日系企業が進出しているが、同市は封鎖されたままで、操業正常化の見通しは立っていない。

 日本経済は消費税増税で個人消費が冷え込み、昨年10~12月期はマイナス成長に転落したとみられる。足元の今年1~3月期はその反動が期待されていたが、新型肺炎という新たなリスク要因の登場で、にわかに不透明感が増してきた。

 消費税増税の負担軽減策に加えて、昨年12月には事業規模26兆円の経済対策を決定しているが、それだけで十分かどうかは見通せない。政府、日銀は、状況に応じて機動的に政策を発動できる態勢を整えておかなければならない。

2020年2月6日 無断転載禁止