第50回ダボス会議/大転換への覚悟を

 世界経済フォーラム(WEF)が主催し、各国の政治リーダーや企業トップらが集まり国際社会が抱える問題の解決策を探る年次総会(ダボス会議)が先月、開催された。

 今回が50回目となる会議だったが、「気候の危機」といわれるまでに深刻化した地球温暖化や難民の発生などで不安定化する世界、持つ者と持たざる者との間にある巨大な格差など、グローバル化した資本主義がもたらす諸問題解決への取り組みを加速させる成果は得られなかった。

 会議では、国際社会が直面する多くの危機を解決するには、これまでの経済や社会の在り方を根本から変革する必要があることを指摘する声が相次いだ。各国の政治や経済界のリーダーは、よりよい世界実現のため、勇気を持って大変革に取り組むという覚悟を持つべきだ。

 今回の最重要テーマは「気候の危機」だった。スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんは「危機をあるがままに認識しなければならない。私たちの家は燃えている」と各国に積極的な対策を求めた。ドイツのメルケル首相は若者と温暖化の危機を否定する者の間のギャップが広がっていることに懸念を示し「(温暖化防止のための)パリ協定の目標実現に人類の生存がかかる」と訴えた。

 だが、パリ協定からの離脱を決めたトランプ米大統領は温暖化問題に言及すらせず「悲観的でなく、楽観的になるべき時だ。世の終わりが来るかのような予測は、はねつけなければならない」と述べるなど、ギャップの大きさを印象づける結果となった。

 ダボス会議に向け、市民団体のオックスファムは「世界の金持ち2153人の資産は、世界人口の60%を占める46億人の資産より多い」との報告書を発表し、拡大する貧富の格差を埋める行動を取るよう求めた。

 WEFは会議に際し、株主の利益を最優先する資本主義ではなく、多くの利害関係者(ステークホルダー)、社会全体の利益に奉仕する資本主義に転換させることの重要性を訴えた。

 だが、多くが自家用ジェット機で会議に乗り込み、高級ホテルに宿泊する大企業のリーダーの行動や美辞麗句が、世界の貧困層や市民社会の信頼を勝ち取るものであったとは思えない。

 「米国第一主義」を掲げるトランプ氏らの行動がもたらしたマルチラテラリズム(多国間主義)の危機への、具体的な解決策が見えてきたとも言えない。

 環境問題を解決し持続可能で公正な社会を築くにはWEFの指摘を待つまでもなく、既存の政策や意思決定の方法を根本から転換させる必要がある。アル・ゴア元米副大統領はそれを実現するための政治的意思の欠如を指摘した。

 オーストラリアで先住民の権利拡大に取り組む市民団体代表は気候変動に関するセッションで「暑くなる地球の中で多発する山火事などを目にしても思い切った行動に踏み出さない指導者は、じわじわと温度が上がることに気付かず死に向かうゆでガエルのようだ」といらだちを示した。

 深まり行く危機から日本だけが無縁でいられるはずはない。日本の政策決定者も大転換を実現するための時間はどんどん少なくなっているとの認識を強めるべきだ。

2020年2月10日 無断転載禁止