少年法年齢引き下げ/確たる根拠が見えない

 政府は、少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げる改正案の今国会提出を見送る方向で調整に入った。当初、2017年3月から引き下げの是非などを議論している法相の諮問機関・法制審議会から2月に答申を受け改正案をまとめるシナリオを描いていたが、議論は紛糾に紛糾を重ね、意見取りまとめのめどが立っていない。

 また公明党が反対の立場を崩さず、国会提出に必要な与党内の手続きで了承を得られる見通しもない。犯罪に手を染めた少年の更生に携わってきた元少年院長や元家裁調査官らも次々と反対を表明。罪に問うより立ち直りに重きを置く現行制度は十分に機能していると訴えている。

 法制審の部会で引き下げ賛成の委員もこの点に異論はない。その上で「法制度全体の整合性」の観点から、民法で18歳から一人前の大人として扱われるので、少年法の扱いもそれに合わせるべきだと説く。反対派は、20歳未満の飲酒・喫煙禁止が維持されたように、法律にはそれぞれ目的があり、年齢の区分が異なるのは当然と指摘する。

 こんな場面が延々と繰り返されてきた。だが更生に実績のある現行制度をなぜ変えなければならないのか、確たる根拠は見えてこない。改正ありきで議論をさらに重ねる必要があるのか疑わしい。

 現行制度で少年事件は全て家裁に送致され、家裁調査官が少年の成育歴や家庭環境、交友関係を綿密に調査。この過程で本人や親への教育的な働き掛けも行い、審判では刑罰ではなく、少年院送致や保護観察など保護処分を決定する。16歳以上で故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合は原則、検察官に逆送され、刑事裁判となる。

 重大事件でなければ罪に問わず、本人に反省させ、立ち直らせることに力を注ぐ。しかし民法改正により親の同意を得ずに契約行為を行えるようになり、自律的な判断能力があるとみなされる18、19歳には相応の責任を負わせるべきだという声が強まり、自民党は15年9月に少年法の適用年齢引き下げを提言した。

 法制審の部会は家裁や少年鑑別所、少年院の幹部、担当者を聴取。引き下げで18、19歳を現行手続きから切り離した場合の弊害を巡り「早期の手当てができなくなる」「実務で苦労や紆余(うよ)曲折が増える」などの懸念が相次ぎ、引き下げに伴い若年成人向けに必要となる制度なども検討した。

 「起訴猶予になった全事件を家裁が調査し内容によって保護観察などの処分を決定」「18、19歳を含め若年受刑者が少年院のような教育的処遇を受けられる体制を整備」などの案が出たが、いずれも現行制度には及ばないと批判を浴び、日の目を見なかった。

 最近になって法務省は18、19歳について、重大事件は検察官が家裁の判断を経ずに起訴し、それ以外の事件は全て家裁に送致する案と、容疑があれば全事件をいったん家裁に送致する案を「検討のたたき台」として部会に提示した。刑罰を科す範囲をこれまでより拡大するとしているが、ここまで来ると、現行制度と見分けが付きにくい。

 なんとか議論の着地点を見いだしたいということだろう。ただ、それにより現在の仕組みにどんどん近づいていくのは皮肉というほかない。

2020年2月11日 無断転載禁止