診療報酬改定/勤務医の負担軽減急げ

 医療サービスの公定価格である診療報酬の4月からの改定内容が決まった。過酷な労働環境にある勤務医の働き方改革を進める目的で、関連する報酬を手厚くするのが柱だ。増額分をどう使うかは医療機関の判断であり、どこまで残業削減につながるかは見通せないが、高水準の日本の医療を守るためにも現場の医師の負担軽減を急ぎたい。

 2017年の総務省調査では、週の労働時間が60時間を超える人が雇用者全体で11.8%だったが、勤務医は37.5%に上った。さらに16年の厚生労働省調査によると、救急、当直などに対応する病院勤務医の4割超は月の残業時間が80時間を超え、200時間超の人も4.5%いた。

 厚労省の脳・心臓疾患に関する労災認定基準は、発症前1カ月におおむね100時間、または2~6カ月にわたり月平均80時間を超える残業があったことを「過労死ライン」としており、勤務医の現状は極めて厳しい。

 その是正に向け24年度から勤務医の残業時間の罰則付き上限規制が始まる。地域医療を担う特定の医療機関や研修医は「年1860時間」、勤務医一般は「年960時間」が上限となる方向だ。緊急対応の義務がある医師は、一般の労働者に比べ高い残業上限設定になるが、これさえも実現へのハードルは高い。

 今回の診療報酬改定は、この残業規制導入への地ならしとして、特に過酷な救急医療で患者受け入れ実績が高い病院への報酬を厚くする。具体的には、地域の救急医療を担う病院について、患者入院時に5200円を上乗せする。患者窓口負担はうち1~3割だが、負担増に見合う効果が上がるのを期待したい。

 このほか電子カルテ入力など医師の事務作業の補助職員を配置した場合の加算も拡充。大病院が重症患者への専門的治療に専念できるよう、紹介状なしで大病院を受診した患者から追加料金を徴収する制度も拡大する。

 ただこれらはいずれも勤務医の長時間労働の根本原因である「医師不足」の直接的な解決策にはならない。医師不足は地方で特に深刻だ。医師偏在対策と併せた取り組みが引き続き求められる。

 今回の診療報酬改定は全体では0.46%引き下げだが、医師の技術料や人件費などに当たる「本体部分」は0.55%引き上げで600億円増となる。そのうち勤務医の働き方改革には126億円が投じられ、他にも既存の基金で143億円程度を手当てする。

 20年度予算案では、高齢化に伴う社会保障費の自然増が5400億円と見込まれたが、薬価の引き下げなどで1300億円を抑制、何とか4100億円とした。その中で医師らへ支払う本体部分を600億円増やすことがいかに重い政策判断かは明らかだ。

 厚労省の18年度調査では、一般病院全体では人件費増で1施設当たりの利益率がマイナス2.7%の赤字だったが、一般診療所は12.9%の黒字だった。一律の本体部分引き上げには疑問の声があることも指摘せざるを得ない。

 民間企業の多くは労使の自助努力で従業員の働き方改革を進めている。最終的には国民が税や保険料などで負担することになる多額の公費を勤務医の働き方改革につぎ込む以上、政府はきちんと効果を検証し国民に説明すべきだ。

2020年2月12日 無断転載禁止