宍道湖の貴重な地蔵さん劣化進む 保護願う住民

長年風雨にさらされ、劣化が進む洗合地蔵尊
 松江市国屋町の国道431号線沿いにひっそりとたたずむ一対の地蔵「洗合(あらわい)地蔵尊」の劣化が進み、消失の危機に立たされている。戦国時代に宍道湖周辺であった毛利氏と尼子氏による合戦の死者を弔うために造られた由緒ある地蔵だが、雨風にさらされて見る影もない。移転などには多額の費用が必要で、地域住民らが頭を悩ませている。

 松江市史などによると、戦国武将の毛利元就が1562年、島根半島から尼子氏の拠点の月山富田城(現・安来市広瀬町)への補給経路を断つため、白鹿城(現・松江市法吉町)を攻略する作戦を立案。毛利方が陣を構えた洗合城(同国屋町)周辺の攻防で、多数の死者が宍道湖に浮かんだという。

 洗合地蔵尊は江戸時代ごろ、天倫寺(松江市堂形町)の番匠大工が慰霊のために制作したと伝えられる。2体とも高さ約2メートルで、国道整備に伴い1968年に現在の場所に移された。風雨による損傷が激しく、首や台座の設置面にはコンクリートで補強した跡が目立ち、目や耳、鼻は原形をとどめていない。

 地元の土手東町内会は毎年8月、国道の線路側にある歩道上で供養祭を実施。17年までは岸壁を降りて地蔵を洗っていたが、車の往来の激しさや会員の高齢化を理由に2018年から近づかなくなった。

 移転や新築には少なくとも約1千万円が必要で、同会は11年11月、市に地蔵の移転新築を要望したが、政教分離などを理由に実現しなかった。

 今後は市への再要望も視野に対応策を検討する。10年前から同町内会長を務める平野政雄さん(77)は「観光資源としても貴重なお地蔵様で、このまま朽ちていくのを放っておくわけにはいかない。次世代につなげられるよう手だてを考えたい」と力を込めた。

2020年2月16日 無断転載禁止