五輪延期へ/選手本位で丁寧な検討を

 新型コロナウイルスの感染拡大が欧州と米国で深刻化する中、国際オリンピック委員会(IOC)がアスリートの批判と関係者の要望の声に押され、これまでの態度を一変させ、東京五輪の開催延期を本格的に検討することを明らかにした。IOCは「中止は問題解決にも誰の助けにもならない」と強調し、東京大会を延期した上で、いずれかの時点で開催する意向だ。

 またIOCは「大会組織委員会や日本政府、東京都と連携し(中略)延期案を協議する」と明言した。マラソンと競歩の札幌市への移転を独自に決めた強硬な姿勢を引っ込め、開催国側の意向を尊重する姿勢を示したのは、当然とはいえ少し安心もする。

 それにしても、ここに至るまでのIOCの態度はかたくなだった。まだ、延期などの検討に入るには早すぎると言い続けた。

 その姿勢に対し、過去五輪で活躍したアスリートが「無神経で無責任」「私たちの健康を脅かしたいのか」「鈍感で状況が読めていない」とカナダ、ギリシャ、英国から次々に批判の声を上げた。

 選手を派遣する責任を担う各国オリンピック委員会ではノルウェー、ブラジル、オランダがしびれを切らしたように、大会延期を要望する声明を発表した。

 選手の健康に危険が及びかねない状況となっても、選手が五輪の出場権獲得を目指していた予選大会が次々に中止に追い込まれても、IOCは延期の検討に乗り出そうとしないとの印象を世界に与え、組織にとって大きなイメージダウンとなった。

 東京五輪は巨大イベントだ。単一競技の大会とは訳が違う。33競技の339種目を実施する。

 延期によってどのような影響が選手、観客、運営を担う大会組織委、放送権者、スポンサー企業、さらにIOC自体に出るのか。一つ一つ精査しなければならない。それは、とてつもなく複雑な作業となるに違いない。

 既に約450万枚を販売したチケットは、そのまま有効となるのかといった問題もある。広範囲な検討が必要なだけに、IOCは日本政府、東京都、大会組織委、さらに各国際競技連盟と、これまで以上に強い連携体制を築かなければならない。

 まさに難題だ。その中でもまず何より、選手が不利益を被ることがないよう、特に公平な出場機会が保証されるよう、丁寧で慎重な検討を進めてほしい。

 日本としては、聖火リレーを再検討する必要が出てきた。3月26日に福島県の大規模サッカー施設、Jヴィレッジからスタートする予定だ。ここは東日本大震災直後から原発事故対応の拠点となった施設だ。出発点とすることで「復興五輪」の象徴と位置付けられてきた。

 IOCは延期の時期について、今後4週間以内に決める見通しだ。その検討が進む中で国内聖火リレーを続けることは果たして正しいのか。

 五輪は祝祭のときでもある。その序章としての聖火リレーは4週間以内に停止を余儀なくされる恐れがある。出発を当面見送り、様子を見るという選択肢はないのか。

 聖火を掲げる走者も沿道の市民も、みんなが心から祝祭の訪れを喜び、笑顔が広がる中で催されるべきだろう。

2020年3月24日 無断転載禁止