世事抄録 原発とコロナの因果律

 重々しく響く「因果は巡る糸車」とはNHK人形劇・新八犬伝の名せりふ。東日本大震災からの復興アピールを狙う2020東京五輪が延期になるとテレビで語った安倍晋三首相を見ていて、故坂本九さんの語りが不意によみがえってきた。未曽有の原発事故を引き起こして9年を経た今春、確かに放射能と同じ目には見えない新型コロナウイルスが人々を襲っている。

 理由のない因果律ではない。第1次安倍政権の2006年の国会で、原子核工学科出身の共産党議員が巨大地震と津波が原発の電源・冷却機能の喪失を招くと再三警告したのに対し、「そんな事態は考えられない」と対策を拒否したのが安倍氏自身だ。世間は震災時の菅政権の記憶しかないだろうが、その5年前に備えのチャンスを見逃していたことになる。五輪誘致に際し、今も継続中の原発非常事態宣言の状況を「アンダーコントロール」と塗り替えながら、ついにコロナに足元をすくわれた。

 無策の既視感はコロナ対策に続く。なんと武漢封鎖の1月23日、首相名で「中国からの観光客歓迎!」と現地広告。封鎖直前の脱出者を含め成田・関空・名古屋3空港だけで2万人近く入国させ、水際作戦は早々に崩れた。豪華客船内の惨状の一方、2月末には政治ショーみたいな首相会見を演出するから、逆に不安が募る。都市封鎖でコロナ難民が田舎へ走る光景が、果たして安倍氏に見えているのだろうか。

(松江市・風来)

2020年4月2日 無断転載禁止