「あご」に学ぶ

 島根の「県魚」として親しまれているトビウオが旬を迎えている。県魚は花や木、鳥のように47都道府県全てで定めているのかと思いきや、全国知事会の資料によると、21県にとどまる▼島根の県魚を総務省の家計調査に基づく消費量で決めるなら、全国上位のアジやサバ、貝類も含めるとシジミも有力候補だろうが、1989年の「県豊かな海づくり大会」に合わせて県が行ったアンケートなどを踏まえ、トビウオに決まった▼別称は言わずと知れた「あご」。滑空できる発達した胸びれと腹びれが特徴だ。県水産試験場(現水産技術センター)編著『島根のさかな』によると飛ぶ鳥を「あすか」、雑魚の「魚」を「こ」と読むことから「あご」と呼ぶようになった。諸説あるようだが、豊富な漁獲量やあご野焼き、干物などの多彩な食文化から考えると、並み居るライバルを抑えて県魚の座にあるのは納得できる▼「何で魚の中でトビウオだけ羽があって空を飛べるの?」。マグロなどの捕食から逃れるためというのが、その質問の一般的な答えだが、本当のところは分からないらしい▼だが、魚にとって必死の行動であるとは言えそうだ。未知の世界の空中に飛び上がり、危機を巧みにかわす姿は、不確実性を増している「コロナ後」の進み方を模索する地方に似ているように思える。ある意味、島根らしさにあふれた魚だと一層親しみが増している。(万)

2020年6月27日 無断転載禁止