島根中央・加藤さん、高校カヌー代替大会3種目優勝

カヌースプリント・男子カナディアンシングル500メートルなど3種目で優勝した加藤大雅さん=島根県美郷町信喜、江の川くにびき国体記念会場
 がんで闘病中の母に感謝と勇気を届けた。19日に島根県美郷町であった県高校夏季体育大会カヌー競技で、島根中央高校3年の加藤大雅さん(17)が母・良子さん(55)への思いを胸にパドルをこぎ、3種目で優勝した。古里の愛知県日進市を一人離れて約2年。「泣き虫」という自分の背中を押し続けてくれた母を元気づけられると笑顔を浮かべた。

 良子さんの病気を知らされたのは中学2年の時。乳がんだった。1年後には余命1年の宣告。実感が湧かなかった。治療の影響で苦しむ姿を見るたび、心配の度合いが増した。

 転機は中学3年の塾の夏季合宿。県外生を県内の高校に呼び込む「しまね留学」のポスターが目に飛び込んだ。良子さんのそばにいたい半面、身の回りのことができない自分を変えたい思いが湧いた。「早く独り立ちしなきゃ」。良子さんも「自分のためになるなら」と応援してくれた。

 興味を持ったカヌー部がある島根中央高を選んだが入学前に指を骨折し、部活では走ってばかり。不安と慣れない生活に、トイレに隠れて涙を流した。毎日のように良子さんにLINE(ライン)で愚痴をこぼすと「私がこんななのに、あんたが弱音言ってどうするの」と気合を入れられ、弱気になることも減った。

 掃除や洗濯をする寮生活で実感した良子さんへの感謝。「照れるから」と本心を一度も伝えられていない。全国で入賞し、恩返しをと思っていただけに、新型コロナウイルスで全国高校総体や国体がなくなったショックは大きかった。

 「何で俺らの代で」と良子さんに伝えると「落ち込んでいる暇はないよ」と励まされた。今度は自分が前を向く番だと切り替えた。

 この日は中止された県総体の代替大会。片膝を付き、片側のみをパドルでこぐカナディアン4種目のうち、500メートルのシングル(1人乗り)とフォア(4人乗り)、200メートルのシングルを制した。500メートルシングルはゴール手前で抜き去り「無我夢中で前しか見ずに踏ん張った。とてもうれしい」と振り返った。

 「母にすぐに伝えたい。安心させられるし、闘病の励みにきっとなると思う」と力を込めた。

2020年7月20日 無断転載禁止