九州豪雨1カ月/次の水害をどう避ける

 熊本県南部を流れる球磨川が氾濫して1カ月。7月には九州各県、東北などで豪雨が相次ぎ観測史上1位の雨量を記録した地点が続出、80人を超える人が浸水や土砂崩れの犠牲となった。

 地球温暖化が進めば大気の水蒸気量が増え、豪雨災害のリスクがさらに高まるだろう。球磨川の氾濫などを教訓に、早期の避難の徹底など、次の災害を避ける方策を積み重ねなければならない。

 球磨川では特別養護老人ホーム「千寿園」で深刻な被害が出た。一般的に高齢者向け施設は、地価が低く、あまり安全ではない場所に建てられる例がある。これまでも河川の氾濫などで深刻な被害を受けてきた。

 この反省から水防法が改正され、避難確保計画の作成と訓練が義務付けられ、千寿園は実施してきた。被害の甚大さから避難開始が遅れたと指摘するのは容易だが、入所者らを安全な場所に移すのは大変な仕事だ。

 もし空振りに終わったらと考え、行動が遅れることもある。対策として、施設改修を行政が早急に財政支援し、短時間での避難を可能にすべきだ。長期的には、浸水想定区域への立地規制など災害を避ける制度の導入も不可欠だ。

 確実な避難のため内閣府は、自治体が出す避難の勧告と指示のうち勧告を廃止する方針という。勧告は安全な場所へのすぐの避難を求め、指示は災害の発生が切迫しており重ねて避難を促すのが本来の趣旨だが、現実には「指示が出た段階で避難」と受け止めている人が多いからだ。

 山形県の最上川などの氾濫では、九州豪雨の被害を受け早めに避難したことが人的被害の軽減につながったとも言える。早期の避難を実現するため指示に一本化することは評価したい。

 同時に、雨量予想の精度を上げることが求められる。7月4日の明け方から深刻な被害となった球磨川のケースでは、3日午後の段階で24時間降水量は多い地域で200ミリと気象庁は予想していたが、現実にはその2倍を超える量だった。

 400ミリの可能性に言及する気象庁の資料も当時あった。天候を完全に予測することは不可能だ。だとすれば、大規模な浸水が発生する雨量となる可能性があるなら、自治体や河川管理者、住民にそれを伝えることを検討すべきではないか。

 その数値も念頭に置きながら、自治体や住民らが自主的に判断して、より早期の避難につなげることができるはずだ。

 線状降水帯の発生によって深刻な災害が起きることは、今回の球磨川を含めて何度も経験してきた。発生予測の向上のため技術開発を進めるとともに、発生が予測されればすぐに避難することを、安全面から優先するよう提案する。

 三重、和歌山の県境を流れる熊野川の水害常襲地帯を歩いたことがある。ここでは地区ごとに、逃げるタイミングと方法を示した防災行動計画(タイムライン)を作成していた。川の水がどの高さに達すれば避難を開始するかという目安を持つ所もあった。

 自治体からの避難勧告を待つだけでなく、地区独自の計画を作り、自ら現状を確認しながら早めに行動することも重要だ。大地震への備えと同様、水害から身を守るためには「自助」や声を掛け合いながら逃げる「共助」が基本である。

2020年8月5日 無断転載禁止