隠岐島前高卒業生が都内で起業

葬祭関係の企業「むじょう」を立ち上げた隠岐島前高卒業生の前田陽汰さん=静岡県富士宮市
 隠岐島前高校に島根留学し、昨年春に慶応大総合政策学部に進学した前田陽汰さん(19)が、葬祭関連事業の会社「むじょう」(東京都目黒区)を設立した。学生起業家として、スマートフォンなどを使って故人をしのぶサービスを展開。高校生活で興味を持った物事の「終わり」「変化」に対する考え方が活動の原点にあり、理想とする社会の実現に向け奮闘している。

 前田さんは東京都出身で、自然に囲まれた環境で高校生活を送りたいと隠岐島前高校に留学し、卒業して慶応大に進学した。会社は今年5月に設立。高校の後輩で寮の同部屋だった杉村元さん(18)と、大学の友人の佐々木雅斗さん(19)を誘い、3人で活動を始めた。

 初めて商品化したのはスマホやネットを活用して故人の思い出を遺族や友人らが共有する「葬想式(そうそうしき)」。喪主から招待を受けた故人の友人らがスマホで生前のエピソードやメッセージ、写真を投稿し、しのぶシステムを構築した。

 起業のきっかけは祖父の葬式で、自分の知らない祖父の一面を参列者に教えてもらい、自らの生を考えさせられたことだった。

 近年は家族葬が増え、新型コロナウイルスで葬式に参列できないケースも増加。「故人をしのび、生を考える大切な機会が失われそうだからこそ残したい」と理由を話す。

 また海士町での高校時代、懇意にしていた漁師に「大学を卒業したら船をやるから戻ってこい」と声を掛けられ、住民の多くが自分の代で地域を消滅させてしまうことへの恐れと罪悪感を持っていると感じた。物事の終わりや変化を前向きに捉える社会を築きたいとの思いも葬祭の事業につながった。

 サービスは同社ホームページで登録すれば誰でも利用でき、葬儀社にも売り込む。今後は、寄せられたメッセージや写真を冊子にするなどの展開を視野に入れている。前田さんは「物事の終わりを未来につなげて循環させるプロジェクトを作りたい」と話した。

2020年9月21日 無断転載禁止