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「水の都」と呼ばれるインド南部のケララ州は、580キロに及ぶ海岸線に、川や運河が無数に入り組む。バックウオーターと呼ばれる入り海にはヤシやバナナ、ゴムの木々が生い茂る。
水郷地帯をめぐるクルーズは南国情緒豊かなケララ観光の目玉。客が乗るのは台所や寝室を備えた伝統的な木造のハウスボートだ。
「水上ホテルとして宍道湖で応用できるんじゃないか」。視察団団長の1人で中海・宍道湖・大山ブロック経済協議会の古瀬誠会長(松江商工会議所会頭)はひざを打った。
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| 「水の都」と呼ばれるインド・ケララ州で、水郷地帯を遊覧する木造のハウスボート=7日 |
日本語ガイド不足
観光業はケララ州の主要産業の一つだ。欧州がターゲットだが、近年はアジアにも傾注。視察団は州政府との会談で、ツアーガイド養成のため日本語教育への協力を求められた。
約5千年の歴史があり、世界保健機関(WHO)も推奨する伝承医学「アーユルベーダ」も重要な観光資源で国内外からの医療ツーリズムを呼び込む。視察団は州政府認定の施設で、自然治癒力を高めるための食事やオイルマッサージ、ヨガなどの現場を見学した。
州内で医療ツアー会社を経営する真美・デービスさんによると、東京電力福島第1原発事故後、アーユルべーダについて日本からの問い合わせや来訪者が急増。ここでも日本語ガイド不足が課題になっている。
人材交流具体化へ
ケララ州は、水と緑の豊かな自然に恵まれ「神に抱かれた国」とも称される。アーユルベーダをはじめさまざまな文化遺産も大切に守り続ける。例えばコチ市の水辺。マカオ伝来とされる独特の伝統漁法が残り、10メートル四方の大きな網が並ぶ独特の景観を形成する。
一方で、コチ市郊外のIT企業が集積するインフォパーク周辺は新たな開発が進む。出雲市の長岡秀人市長は遅れたインフラの整備が進む様子を見ながら「守るべきものを守りながら、開発することが最大の課題」と指摘。開発と文化保護のバランスをとるため、日本から協力できる糸口はないか思いを巡らす。
インドでのビジネスは、その難しさから「あわてず、あせらず、あきらめず」が鉄則という。圏域市長会はまず、人材交流の具体化を進める方針だ。直接触れ合う中で互いの文化や価値観を理解し合うことこそ、視察団が最終目標とするインドへの企業進出への、大きな足掛かりとなる。
=おわり=
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