インドの風
【インド人はみんなターバン巻いてる?】
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このコーナーは、協会発足を縁にご協力をいただいているインド在住の島根、鳥取県人会の皆様からの情報を紹介します。日本人が知らない様々なインドの素顔…最初に寄稿していただくのは、出雲市出身の周藤孝夫さん(文、写真)です。
インド人はみんなターバンを巻いていると勘違いしている日本人は多くいます。確かにシン首相をテレビや新聞でよく見かけますが、そのターバン姿が印象的ですね。色も黒、青、赤などたくさんあります。実は、このターバン姿の人はシーク教徒の男性だけです。そのシーク教徒はインド全体でわずか1.9%しかいません。しかも女性はターバンをしないのでターバンをしているインド人は全体の1%にも満たないでしょう。といっても人口12億人のインドのことですから、その数は決して少なくありません。 |
【貧困の国インド?】
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インドといえば「貧困」が不名誉な代名詞にもなっています。インド政府の今年の調査によれば、貧困層は急速に減少しているものの、依然として人口の21.9%もいます。ニューデリーやムンバイなどでは、目を覆いたくなるようなスラム街で、学校に行かず物ごいをしている子どもが多くいるのは事実です。ここでいう貧困層とは1日の支出が地方で27ルピー(約44円)、都市部で33ルピー(約54円)以下と定義されています。 |
【インド式商法】
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インドの市場では野菜、果物、魚介類、肉類などを外国人は2〜3倍の値段で買わされることが多くあります。それでも日本の物価と比べて格段に安いので、日本人はあまり気にもかけず買ってしまいます。これは外国人には高く売りつけるインド式商法で、だまされたと思うこともしばしばです。 |
【男社会のインド】
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インドでは女性が働いている姿をあまり多く見かけません。レストランの給仕、スーパーや喫茶店の店員など、ほぼ全員男性です。美容室の店員ですら全員男性の所があります。女性の職業といえば、学校の先生、会社の受付嬢、ブティック店員、スチュワーデスなどです。これはカースト制度や男尊女卑の風習がいまだに残っているためです。実際、昼間の町でも一人歩きの女性はほとんど見かけません。喫茶店や映画館も女性一人で入ることはありません。周囲の目があるからでしょう。だたし、中東のイスラム国で女性の権利や自由が厳しく制限されているのとはまったく違い、民主主義国のインドでは男女平等で職業選択の自由もあります。しかし現実には、民間企業や政府機関では女性管理職はほとんどいません。 |
【宗教と食文化】
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インドといえば仏教発祥の国。さぞかし仏教が盛んだろうと思いきや、実は仏教徒は全体のわずか0.8%しかいないのです。多いのはヒンドゥー教(81%)とイスラム教(13%)で、その他にもキリスト教、シーク教、ジャイナ教、ゾロアスター教など、実に多くの宗教が存在します。ヒンドゥー教は多神教で、有名なシバ神やヴィシュヌ神などは赤や黄色などのカラフルな色で描かれています。また、ガネーシャに至っては頭が象になっていて漫画チックです。もちろん、インドの神聖な神様を「しまねっこ」や「鳥ピー」など、ゆるキャラと同列で比較してはいけないでしょうが、ついそうしたくなります。
牛を食べないヒンドゥー教徒と、豚を口にしないイスラム教徒を足すと全人口の94%になるインドでは、肉といえばもっぱら鶏肉です。マグドナルドでも牛を使ったハンバーガーは存在せず、インド市場向けに特別に開発したチキン・バーガーを販売しています。
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【カースト制度】
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カースト制度は紀元前13世紀ごろ、北西から来たアーリア人が作った身分制度ですが、今なおインド社会に影響を与えています。カーストはバラモン、クシャトリア、ヴァイシャ、シュードラの四姓に区分され、カースト外にはダリット(不可触民)があります。各階級は、さらに2〜3千のジャーティー(職業)に分かれていて、とても複雑です。各職業は世襲され、家業として代々受け継がれますので、下層階級の人々はなかなか底辺から抜け出すことができないのです。また、違うカースト間の結婚はほとんど不可能です。異なるカースト間の結婚話があると、上位カーストの親が下位カーストの結婚相手を殺してしまうという事件すらあります。 |
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| (4段階のカーストとカースト外の不可触民) |
【インド英語】
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インド人はみな英語が上手だと思っている日本人は多くいます。事実、日本人駐在員が面談する機会の多いインテリ層のインド人は間違いなく英語が堪能です。でも、街中で出会うインド人は英語が話せない人も多くいます。オートリキシャ(エンジン付三輪タクシー)の運転手など簡単な英語しか話せません。また、英語とヒンディー語のチャンポンで話している人もたくさんいます。インドには公用語だけでも22あり、ヒンディー語が最も多く話されています。一方、英語は準公用語ですが、ビジネスの世界では事実上の公用語です。インド人の英語上手な理由はその教育環境にあります。良家の子女はほとんど私立学校に行き、英語で授業を受けています。学校では英語、自宅ではヒンディー語とバイリンガル環境で育っているのです。ただ、先生はみんなインド人で、ヒンディー語の影響を強く受けた癖のあるインド英語で教えるため、生徒も自然とインドなまりの強い発音になってしまいます。
ただし、誤解を避けるために言い添えますが、官・民・学を問わず、インドのインテリ層は英米に留学した人も多く、とても立派な英語を話す人が多くいることも事実です。 |
【インドで凍死?】
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インドは暑い国というのが、私たちの一致した常識でしょう。私が住んでいる首都ニューデリーでは、夏(4〜5月)は気温が45、6度にもなります。外に出たとたんに熱風が襲いかかり、直射日光の下では5分も歩けないほどです。熱中症対策の水は欠かせません。湿度が低いのがせめてもの救いですが、まさに灼熱(しゃくねつ)の大地です。ところが、冬(1〜2月)になると気温は3、4度まで下がります。デリーで今年1月には100人以上が凍死しています。ええっ!? と最初は耳を疑いましたが、有力全国新聞 Times of Indiaの報道ですので間違いではないでしょう。ニューデリーなど首都圏では路上生活者が多く、十分な着る物やシェルターもないので、体力のない子どもや老人が凍死するのです。
しかし、インドは日本の国土の9倍もある大きな国です。インド最北のヒマラヤに近い山岳地帯では、冬は零下になり雪も多く降ります。一方、チェンマイやバンガロールなど南インドに行けば、冬でも結構暖かいのです。北インドに位置するニューデリーの夏は「灼熱のインド」そのものですが、冬は「厳寒のインド」です。インド人の肌の黒さから、インドは暑い国という間違ったイメージが日本人に定着しているかもしれません。 |









