印象に残ったのは、情報化社会を生きていくために必要な資質、能力を問うパネル討議でした。SNSと新聞の信頼度の単純比較で終わらず、エコーチェンバーやフィルターバブル、バイアスについての説明を踏まえ、多様な情報に触れることの大切さが示されました。
この討議を聴き、インターネットだけで情報を入手することの危うさを再認識しました。新聞も、どの新聞、記事を読むかによって情報の偏りは生じます。しかし、紙の新聞の持つ一覧性は、興味関心のなかった事柄と出合う機会が広がる点にやはり価値があると思います。NIEを通じてメディアリテラシーをどう育成するか、どんな活動を展開すればいいかを改めて考える機会となりました。
興味のある実践がいくつもあったので、限られた時間でしたが四つの分科会を聴講しました。新聞の使い方は一つとして同じものはなく、各教科の目標や育成したい資質・能力を踏まえた多様な工夫に学ぶことができました。
どの実践も子どもたちが意欲的に活動する姿が共通しており、友だちと協働する楽しさや新たな発見、できるようになった喜びを感じながら取り組んでいることが伝わりました。その背景には、先生方の細やかな計画があると実感しました。
最も印象に残ったのは私立甲南小学校4年生の「シンブリオバトル」の公開授業です。子どもが記事を紹介し合い、対話を通じて関心を広げていく活動です。私はこれまで社会科や国語科中心にNIEを行ってきました。今後は記事を介して交流、対話し、子どもの興味や関心を広げる実践にも挑戦してみたくなりました。
★やってみよう!NIE~先生方へのメッセージ
新聞は数ある教材の一つですが、教材化に時間や労力が必要なこと、「新聞は子どもには難しい」という思い込みからか、なかなか選んでもらえません。
毛筆の学習の時間に、下敷きの新聞に目を留める子どもの姿を見たことがある先生は多いと思います。新聞に触れる環境やちょっとしたきっかけがあれば、子どもたちは興味を持ちます。これまでそんな場面をたくさん見てきました。
私たちNIEに取り組む教員でつくる
「島根県NIE研究会」は年3回、セミナーを開催しています。地元の教員による実践紹介、情報交換を気軽に行っています。ぜひ、多くの先生に参加していただきたいと思います。
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2025年度島根県NIE秋季セミナーは
11月1日午後1時半から、松江市殿町の山陰中央新報社本社で開催します。オンライン聴講もできます。テーマは
「国語学習とNIE」。詳細は後日、学校やこのホームページ等でお知らせします。
・2025年度島根県NIE夏季セミナー(8月22日)の様子は
コチラ
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/844424
八波直樹
日本新聞協会NIEアドバイザー
大田市教育委員会指導主事
NIEチャレンジ校での実践を経て、今年4月から日本新聞協会のNIEアドバイザーになりました。より多くの実践を吸収し、現場の先生と共有したいと思い、大会に参加しました。
中でもぜひやってみたいと思ったのは、明石市立大久保小学校の「新聞4コマ漫画で『起承転結』を考える」です。
普段何気なく目にする4コマ漫画ですが、タイトルを考えたり、並べ替えたり、登場人物の心情を想像したりと、多様な活用方法がありました。国語科だけでなく、道徳科や家庭科など幅広い教科で活用できると感じました。漫画なら新聞に初めて触れる子どもたちにも親しみやすく、教師も使いやすい素材だと思います。
4コマ漫画を使った実践については、8月22日に行った「島根県NIE夏季セミナー」でも紹介しました。
今回の大会を通して、新聞という一つの媒体には実践者と同じ数だけの実践例があること、改めて活用の幅の広さを実感しました。これからも「この記事は教材として使えるのではないか」という視点を持って新聞を読み、実践につなげていきたいと考えています。
・2025年度島根県NIE夏季セミナー(8月22日)の様子は
コチラ
★やってみよう!NIE~先生方へのメッセージ
私は英語科教員で、NIEに出合う前は授業で新聞を活用したことはほとんどありませんでした。大田市立大田西中学校に勤務していた5年前、コロナ禍で分散登校や臨時休校が続く中、学習支援の一環として届けられた新聞を活用したことがきっかけで、生徒の意見文の投稿を始めました。学校図書館とも連携して実践を重ねるうち、NIEチャレンジ校に声をかけられ、今に至ります。
新聞を授業に活用してみたいけど何からしたらいいのか、迷っている先生。構える必要はありません。目の前の子どもたちと一緒に教員も学べばよいのです。継続して取り組めば、子どもたちの国語力(読解力)向上に寄与することができます。世の中の動きに興味を持つようになったり、さまざまな本が読めるようになったり、子どもの大きな成長が見えてきます。一緒にNIEの輪を広げてみませんか? 校内の環境整備や実践方法など、何でも相談に乗ります。気軽に声をかけてください。