下森博之氏には厳しい結果となった。顕在化した旧津和野町と旧日原町の地域間対立の解消や、再審査となった日本遺産問題への対応、町の強みである観光対策の立て直しが急務だ。
老朽化に伴い、2018年に議論となった町役場本庁舎の移転問題を機に、地域間対立は強まった。
耐震、防災上の観点から旧日原町内で整備することで決着したが、人口が多い旧津和野町側の反発は根強く、企業経営の実績がある松本亨氏を地元有志が担ぎ出す動きにつながった。
選挙戦は自民党の津和野、日原両支部で支援する候補が割れるなど、文字通り町を二分した。
新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済対策をはじめ、下森氏の実績に対し、一定の評価はある。
ただ、文化財を観光振興に生かす「日本遺産」となった、町の「津和野今昔~百景図を歩く~」の認定継続に向け、文化庁は再審査が必要と発表。行政と民間の連携不足を挙げた。認定取り消しとなれば、町の観光業に大きな影響を与えるだけに対策が急がれる。
町民との対話を重視すると訴えた松本氏が4割を得票したのは、現町政に対する不満だけでなく、現状打開を期待する町民が少なくないことを物語る。下森氏には、旧町の特性を生かしたまちづくり、とりわけ旧津和野町の振興策を明確に打ち出し、町民に説明する責務がある。
(益田総局報道部・石倉俊直)