中山間地域の医療を支えた25年を振り返る阿部顕治さん=浜田市弥栄町木都賀、市国民健康保険弥栄診療所
中山間地域の医療を支えた25年を振り返る阿部顕治さん=浜田市弥栄町木都賀、市国民健康保険弥栄診療所

 合併前の旧島根県弥栄村時代から中山間地域の医療を支えて25年。浜田市国民健康保険弥栄診療所(浜田市弥栄町木都賀)の阿部顕治所長(65)が今月末で定年退職する。県平均を大きく上回っていた脳卒中死亡率の低下を実現。健康づくりの住民勉強会にも力を入れ、暮らしに寄り添う医療を実践し続けた四半世紀だった。
      (宮廻裕樹)

 着任当初、過疎化、高齢化が進む地域は、脳卒中死亡率(1990~95年)が県平均の1・8倍という大きな課題を抱えていた。「最初は何したらいいのか分からなかった」。とにかく患者の訴えを聞き逃すまい、敷居を低くしようと努めた。

 千葉県出身。島根医科大(現島根大医学部)時代に同級生らと農山村地域の研究会を立ち上げ、体を酷使する農家の暮らしを目の当たりにしたことが「患者と近い距離で接する仕事に役立った」。

 診察を重ね、分かったのが、持病の高血圧や糖尿病を放置している人の多さだった。村と掛け合い集落ごとに健康診断用の送迎バスを出し、患者の年間の医療計画も立てた。

 脳卒中の予防策も、自身の健康状態を知ることから始まる。当時あまり知られていなかった「家庭血圧」に着目し、自宅用器具の使い方の勉強会を開いた。こうした積み重ねが、脳卒中平均死亡率(99~2004年)を、県平均の1・27倍まで低下させた。

 リハビリを学び、認知症予防サロンを開催。住民主体の動きも生まれ、その一つが、認知症や終末期をテーマにした創作劇という形になった。

 「住民一人一人の生活を想像できるのが診療所の強み。小さな町だからこそ、住民と一体なって医療に取り組めた」と振り返る阿部さん。第二の人生も、市内で診療所の支援を続ける。