ステージ後ろのブースで音響を操作する星野智春さん
ステージ後ろのブースで音響を操作する星野智春さん

 迫力の演技を盛り上げるのが音楽の存在だ。ステージの後方で音を操り、ステージにじっと目をこらすのが入社2年目で音響担当の星野智春さん(25)。「一つ間違ったボタンを押すと取り返しがつかない」。ミキサーのつまみを握る手に緊張感が漂う。

 星野さんは、パフォーマーとして、サーカスデビューを目指す訓練生でもある。舞台の盛り上がりを左右する音響で、本格的にサーカスに関わりたいと自ら志願し担当になった。ジャグリングでは、テンポの違う音楽や効果音を素早く変換。バイオリンの演奏時には、マイクの音を調整し、別の音楽と融合させ、絶妙なハーモニーを作り出す。毎秒気が抜けない仕事だ。

 仕事は、公演中にとどまらない。パフォーマーの練習に付き添い、演出担当者を交えて意見を交わす。効果音は最適なものを自分で選び、音源を編集したりする。「専門性が高く、どこまでもこだわれるからこそ大変」と話す。

 音響担当になり「技だけでなく、演技の構成力がレベルアップした」と、自身の演技にも好影響を与えているという。頭の中で音楽を思い浮かべて練習することで、パフォーマンスに深みが出てきた。

 松江公演は、回を重ねるごとに盛り上がりが増していると感じ「もっと勉強し、トラブルにもしっかり対応できるようになりたい」と「二刀流」を極めようと必死だ。次の松江公演では、舞台で躍動する星野さんの姿も見られるかもしれない。

        (林李奈)