第三章 宝船(三十八)

 寅蔵は朝から夕まで本町を歩き、道具屋を見て回っている。おかげで薬種の臭いに慣れてしまい、店先や家々の軒下に並べられた菊鉢も香って清々しい。

 だが寅...