東京電力福島第1原発の放射性物質を含んだ処理水が海洋放出されたことに対して、水俣病の被害者団体から直ちに中止を望む声が上がった。メチル水銀を含むチッソの工場排水は何を損なったのか。石牟礼道子「苦海浄土」は、水俣からの声の背景にある、その損なわれたものを描いている。

 屈強で水俣病にかからなければ「百まで生きらす」と言われた仙助老人。漁師としての彼の栄華は...